ペリドットの愛情１ ページ5
さくらは薬が効いてよく眠っていたので、昴は博士たちが持ってきてくれた夕食を取り、11時を回ったところで変装を解いた。
赤井に戻って客室に戻るとさくらが目を覚ました。
「…さくら…」
赤井はさくらの名前しか呼べなかった。
なんと声をかけて良いのか全くわからなかった。
「しゅ…いちさ…ん」
赤井の顔を見てさくらは安心したように微笑んだ。
「ごめんね。ごめんなさい。勝手な真似をして。でも、もう逃げたくなかった」
さくらは赤井の顔を見つめる。
「私甘えてた。現実から逃げて、もうあんな苦しい思いはゴメンだって。
逃げ切れると思っていたの。
でも…組織が『エンジェルダスト』を世に広げようとしていると知って、もう逃げられないと思った」
ごほっごほっごほっ！！
一気の喋ったせいかひどく咳き込む。
「さくら…もう分かった、分かったから…」
赤井が見かねて制止するもさくらは構わず話し続ける。
「私の大切な人達は、私がこの手で守りたい。同じ失敗はしない。それに…
私の大切な人達は、私なんかよりずっと強くて、頼りになる人たちだから」
「そうでしょ？ 秀一さん」
はぁはぁと肩で息をしながら、いたずらっぽく笑う。
「ああ。もちろんだ。おとなしく守られていることができない奴らばかりだよ」
俺を含めてね。そう言ってさくらを抱きしめた。
さくらも赤井の背中に手を回した。
その行為が嬉しくて、赤井はさくらの頭に頬を寄せる。
長い時間、こうしてお互いの体温を確かめ合っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - コメントありがとうございます。そうですね。つらい場面が多いですね。その分闇を抜けたときの描写を大切にしてます。上手く伝わるか心配ですが…。明るい話も書きたくなって、実は番外編も近々アップする予定です。そちらもお楽しみに。 (2019年9月11日 19時) (
レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - 想像以上に重いのですが引き込まれます。赤井さんが好きで本当にこのお話に出逢えて良かった。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ありがとうございます！凄く嬉しいです。この後も一波乱も二波乱もありますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年8月25日 15時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月25日 12時) (レス) id: 63b42929fa (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - 失われた声４から、赤井が本名で呼ぶようになりますが、基本二人きりの時だけです。シーンの中で本名と偽名が混在してしまったので、修正しました。ご承知おき下さい。申し訳ありません。 (2019年8月21日 13時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aki | 作成日時：2019年8月5日 13時
