ペリドットとアンバーvol.2【名探偵コナン】【赤井秀一】【安室透】

失われた声３ ページ25

＊＊＊

　今日自分はなんてことをしてしまったんだろう。
スコッチの死の真相を聞こうと工藤邸の敷地に忍び込んだ。
そこで真実を知った。
自分の足音が、階段を上がる音が、スコッチに追っ手が来たと勘違いさせてしまった。
スコッチを死なせたのはほかの誰でもない、自分だった。
その上、頭に血がのぼり治療中のところに乗り込んでいって…。
さくらは大きな発作を…！！
安室は涙が止まらなかった。



ブーッブーッ……

　安室のスマホにメールが届く。
けだるい仕草でスマホを取り出し、メールの差出人を見る。さくらからだった。
沖矢昴からの罵詈雑言でも届いたかと思いながらメールを開く。
そこに書かれたメッセージを見て、また涙が出た。
それと同時に安堵した。

(ごめん。ごめんなさい。
君は何年もこの気持ちを仕舞いこんできたんだったね。
僕は一瞬でギブアップして泣いてしまった。
君は組織の中で泣いてなんかいなかった。
僕は本当に意気地がなかった。君のおかげで目が覚めたよ)



　一晩、安室はヒロのことそしてさくら、いや広瀬りおの事を考えた。
そして赤井が自分についた嘘についても。
以前新出医院でりおはたくさんの人に支えられていると言っていた。
今ならその意味が分かる。
自分たちは一方的に守っているんじゃない。
今目の前にいる大切な人達を守ることは、それまで自分を守ってくれた人たちへの感謝でもあるだと。
気付かせてくれたのは、ヒロとりおだ。
ヒロは言っていた。『

彼女すごく優しいんだよ』

　(そうだな。自分が一番大変な時に俺に十分すぎるほどの優しさを送ってくれたよ。
これで俺もまた戦える…)
時間は朝の５時を回っていた。
ポケットのスマホを取り出し、昨日仕入れた情報をコナンにメールした。


＊＊＊

　安室にメールを送ったあともさくらの頭の中はモヤがかかったままだ。
目を閉じると何かが見えそうなのに見えない。
ただ心臓だけがドキドキと早鐘のようになる。
自然と呼吸が早くなって、口の中がカラカラになった。
『水が飲みたい』
そう思ってフラフラと部屋を出た。

　部屋のカーテンを開けると月明かりが入る。
照明が無くても良いくらいだ。
グラスを手に取り水を汲んだ。

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