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ペリドットの後悔4 ページ16

 昴はさくらの体を抱きしめたまま動けなかった。
新出先生が「昴さん大丈夫ですか?」と声をかける。
「え? ええ…」
その様子を見て、新出は昴に質問を投げかけた。

「ひとつ伺ってもいいですか?」
「なんでしょう?」
「もしかして、彼女の事件の中にあなたも登場…していませんか?」
「なぜそう思われるのですか?」
昴は厳しい表情を新出に向けた。

「さくらさんが話しているとき、まるで次の展開を知っているような感じがしたので」
「……」
「もしかしてと思っただけですよ。他意はありません」
新出の鋭い指摘に、昴は何も答えることができなかった。




 日が少し傾きかけた頃、さくらが目を覚ました。
「ああ、私また飛んでしまったんですね…」
どうやらソファーで昴に抱かれたまま眠っていたようだ。心なしか昴の顔が沈んでいるように見える。
「あの…重かったですよね?疲れたでしょう」
「いいえ、とても温かくて、こちらも寝落ちしてしまいました」
昴がフッと微笑みかけた。

「何か飲みませんか?」
昴はそう言いながら体をずらし、ソファーにさくらを寝かせると立ち上がった。
「それじゃお言葉に甘えて…カフェオレを…」


 ふたり分の飲み物を持って昴がリビングに戻ってきた。
「熱いから気をつけて」
そういってカップを渡される。
ミルクが多めの優しい味だった。

 「少し休んだら先ほどのレコーダを聞きたいです」
さくらに言われて、昴の体がピクリと揺れた。
確かに新出先生からは録音したものを聞いて、出来るだけ慣れた方がいいと言われている。
しかしつい数時間前に、意識を失うほどの体験をしたばかりだ。いくらなんでもそれは。
「さくら、いくらなでも慌てすぎではありませんか? 体に障ります」
「早く…早く終わらせたいんです。本当はあなたに私のこんな姿を見せたくないの。
あなたを苦しめてしまうから…」
その言葉を聞いて、昴は目を見開きさくらの肩に掴みかかった。

 「お前ッ!俺のことなんか考えなくていいんだ! 自分のことを!
自分のことを一番に考えてくれ! 頼むッ!!」
頼むから…。最後は声にならなかった。
涙がひとすじこぼれた。

 昴の様子にさくらも驚く。
沈着冷静な赤井、そして穏和な昴であるはずの彼が、こんなに激しく感情をぶつけてきた事
なんて無かったから…。

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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aki(プロフ) - コメントありがとうございます。そうですね。つらい場面が多いですね。その分闇を抜けたときの描写を大切にしてます。上手く伝わるか心配ですが…。明るい話も書きたくなって、実は番外編も近々アップする予定です。そちらもお楽しみに。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - 想像以上に重いのですが引き込まれます。赤井さんが好きで本当にこのお話に出逢えて良かった。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ありがとうございます!凄く嬉しいです。この後も一波乱も二波乱もありますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年8月25日 15時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月25日 12時) (レス) id: 63b42929fa (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - 失われた声4から、赤井が本名で呼ぶようになりますが、基本二人きりの時だけです。シーンの中で本名と偽名が混在してしまったので、修正しました。ご承知おき下さい。申し訳ありません。 (2019年8月21日 13時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:aki | 作成日時:2019年8月5日 13時

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