ペリドットの後悔２ ページ14
力を失って崩れ落ちた体を、昴が受け止める。
これほどの感情をずっと仕舞い込んで来たのかと昴はショックを隠しきれない。
しかもそう仕向けたのは自分でもある。
＊＊
スコッチが死んだ時、俺は自分が彼を撃ったと取れる言動をバーボンに対して取った。
その場を立ち去ってすぐ、さくらは俺の前に現れた。
なぜやってもいない罪を被り、バーボンから恨まれるような態度を取るのか問い詰められた。
この時に、さくらは自分もNOCだとライに明かしてきた。
自分を責めるバーボンの姿を見たいのか？
俺はさくらに対して冷たく言い放った。
彼女は下を向いて何かを堪えていた。
しばらく沈黙があったあと、自分も本当のことは明かさないと誓った。
この時に言われたんだ。
「あなたは絶対に死なないで」と。
俺は絶対なんて言い切れないと思いながらも、涙を耐える彼女に「ああ、絶対に死なない」と
伝えた。
そうやって、あいつは感情を全部仕舞いこんだんだ。
バーボンに本当のことを言えていたら、彼に怒りをぶつけることが出来たかもしれない。
怒りをぶつけることで泣いたり、悲しんだりも出来ただろう。
バーボンとその悲しみを共感しあえたかもしれない。
だが…、俺はその機会を彼女から奪ってしまったのか…。
＊＊
ボイスレコーダの電源をOFFにすると、新出は額に浮かんだ汗を手の甲で拭いた。
「さくらさんの抱えている闇は我々が思っている以上に大きいのかもしれません」
新出はふうと息をつく。
「昴さんは大丈夫ですか？」
「あ…はい……、大丈夫です」
「さくらさんが言っていたスコッチという方は亡くなったのですね」
「ええ。自分で自分の心臓を打ち抜きました。自身のスマホと一緒に」
「仲間と家族を守るため…ですか…」
「ええ…」
さくらを抱き抱え、客室に運ぶ。そっと寝かせて布団をかけた。
先生は点滴の確認をすると「ちょっと話せますか？」といって廊下に出た。
「今日行った治療を繰り返し行います。
何度も疑似体験をすることで耐性つけていくのです。
いわゆる『慣れ』の状態を作ります。
彼女があの体験に慣れる時が来るのを待つしかありません。
しかも、こういった体験が1つではない気がします。
『また私を一人にしないで』
そう彼女は叫んでいました。
また、というからには二度、三度、と複数回あったと推察されます」
新出の話を聞いた昴は言葉が出なかった。
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aki(プロフ) - コメントありがとうございます。そうですね。つらい場面が多いですね。その分闇を抜けたときの描写を大切にしてます。上手く伝わるか心配ですが…。明るい話も書きたくなって、実は番外編も近々アップする予定です。そちらもお楽しみに。 (2019年9月11日 19時) (
レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - 想像以上に重いのですが引き込まれます。赤井さんが好きで本当にこのお話に出逢えて良かった。 (2019年9月11日 19時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - ありがとうございます！凄く嬉しいです。この後も一波乱も二波乱もありますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年8月25日 15時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
さち - すごくおもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年8月25日 12時) (レス) id: 63b42929fa (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - 失われた声４から、赤井が本名で呼ぶようになりますが、基本二人きりの時だけです。シーンの中で本名と偽名が混在してしまったので、修正しました。ご承知おき下さい。申し訳ありません。 (2019年8月21日 13時) (レス) id: 19a1a08cff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aki | 作成日時：2019年8月5日 13時
