ペリドットとアンバーvol.2【名探偵コナン】【赤井秀一】【安室透】

ペリドットの後悔１ ページ13

　二人がもどると、さくらの前にボイスレコーダーが置かれた。
先生は手にファイルを持っている。要所要所でメモを取るらしい。
先生がさくらの前、昴が隣に座った。

　「良いですか？今からあなたがトラウマになった原因の事件について、目を閉じて話して
ください。
出来るだけ詳しく。その時の気持ちになって。現在形で話してください。
時々『今の気持ちは？』とお伺いすると思います。
その時の気持ちを正直に言葉にしてください」
「分かりました」



さくらは目を閉じた。

　「私はバーボンの携帯をハッキングしています。
最近組織の様子がおかしかったので念のため。
一通のメールが来たので読みます。
『自分が公安だと組織にバレた。もう逃げるところはあの世しかないようだ…』
送り主を見ます。
『スコッチ』と書かれています…ッ…」
そこまで言って呼吸が乱れる。

　先生が頷くと、昴がさくらの背中をゆっくりさすった。落ち着きを取り戻す。
『どんな気持ちですか？』
「ドキドキしています」
『続けてください』

　「いつも落ち合うビルの屋上へ向かいます。早く！早く！
階段は使わず、一旦建物に入って窓伝いに屋上にあがります。
男の人が二人います。
物陰に隠れて様子を伺います。男が誰なのか確認します。
スコッチとライです」

　膝の上に置かれた昴の拳に一瞬だけ力が入る。
「ふたりは何かを話していますが、よく聞こえないので近づきます」
『今の気持ちは？』
「ドキドキしています。すこし胸が苦しい…」
自身の洋服を強く握り締める。
『続けてください』

　「会話が聞こえます…。スコッチの手に……ううっ…銃が…銃が握られて…はぁ…はぁ…」
表情は苦しそうだ。
「スコッチやめて…お願い。ライの言うことを聞いて」
『？』
突然うわ言のように話し出した。

　『さくらさん？』
「スコッチやめて！ライの、ライの言うことを聞いて！ お願いだから！ お願い！！！」
『さくら！！』
『さくらさん！！』
先生と昴が必死で制止するも、さくらは取り憑かれたように泣き叫ぶ。

　「死なないで！！ また私を一人にしないで！！ ひろ先輩ッッ！！ いやあああああああ！！！」

　さくらが心の中にずっと隠してきた絶望と悲しみが、大きな叫びとなって飛び出した後———
さくらは意識を失った。

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