敵の本陣へ1 ページ47
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車いすに載せられたまま部屋へと運ばれたさくらは、侍女たちによってベッドへと寝かされた。薬が効いているのか良く眠っている。
侍女の一人がさくらの花冠を取りイヤリングを外した。
そしてベッドの上に無造作に広がった栗色の髪をそっと整える。
次に胸元のペンダントに手を伸ばすと、もう一人の侍女、さくらを大学から拉致してきた久瑠美が声をかけた。
「ああ、それはアウロラ様の私物なの。
先ほどお召替えをされた時、別の物に変えようとしたのだけど、そのペンダントに手をお当てになったまま動かなくなってしまって…」
足元の衣を整えていた久瑠美は、もう一人の侍女へと近づく。
さくらのペンダントをジッと見つめた。
「アウロラ様が大切にされている物なのかもしれないわ。
聖水を戴いてまだそんなに時間も経っていないし、外してしまって不安になられるといけないから、そのままにして差し上げて」
「承知しました」
ペンダントを外そうとしていた侍女はそれには触れず、他の装飾品を外すと宝石箱へと戻す。
(司祭様が10年来秘書として尽くされ心服される三柳様…。
あの方が国の頂点に立ち、この国を強い国に造り替えて下さる。
そのためにはアウロラ様のお力が必要なのです…)
久瑠美はジッとさくらの顔を見つめ、やがてアンティークのシェルフから手のひらほどの美しい小箱を取り出す。
そっとふたを開け、中にある物に視線を移した。
そこには注射器と薬液の入った小さな瓶が一つずつ。
久瑠美はサイドテーブルに小箱を置くと、カチャカチャと注射の準備を始める。
針先を上に向け、少しピストンを押し込むと「ピュッ!」とわずかに薬液が飛んだ。
「少しチクッとしますが、お許しください。
薬の量は先ほどよりは少なくします」
久瑠美は眠っているさくらに声をかけ、二の腕を掴むと左の肩に注射を施した。
(これで…司祭様が行う、マインドコントロールの下地作りは万全……)
久瑠美は満足そうに微笑んだ。
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aki(プロフ) - レムさん» ありがとうございます!レムさんも色々な方のお話をたくさん読んで研究すれば、きっと書けますよ。 (2021年4月4日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
レム - akiさん» とても作品上手です・・ (2021年4月4日 16時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん!いつもありがとうございます♪続編はちょっとドキドキがあるかも…です(笑)私も気合い入れて書きました。お楽しみに〜! (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - レムさん» 劇場版をどう書くかは色々方法が有ると思います。私は純黒のその後ーという形で使いましたし、他の方のを拝読すると、劇場版の物語に上手くご自身のキャラを織り込んだ小説も有りました。是非上手な方の小説を読んで手法を真似てみるのも良いと思いますよ。 (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - いつもワクワクするお話ありがとうございます!!続編も変わらず応援しています!! (2021年3月17日 13時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2021年1月27日 10時