ペリドットとアンバーvol.14【名探偵コナン】【赤井秀一】【沖矢昴】【安室透】

伝説と予言２ ページ44

　祭壇の中央部まで歩みを進めた司祭は、信者たちの方へ向き直ると片手を上げる。
それを見て信者たちが静まり返った。

　「今日ここに我々が待ち望んだ女神が降臨された。
ようやくこの腐った国を新たに造り直す時が来たのだ！！」

オオォォォ———！！

　司祭の言葉に大歓声が上がった。
やがて白く裾の長い衣を身にまとい、花の冠をかぶった美しい女神が信者たちの前に姿を現す。

　祭壇の中央までゆっくり進むと立ち止まり、真っすぐ信者たちを見据えた。
その美しい姿と透き通るようなアンバーの瞳に誰もが息を飲む。
やがて割れんばかりの歓声があがった。
「司祭様！！」
「アウロラ様！！」
そう叫ぶ者までいた。
凛とした佇まいで信者の心を鷲摑みしたさくらの姿に司祭はニヤリと笑った。



　まだ興奮冷めやらぬ礼拝堂から、奥の控室へと司祭とさくらが戻ってきた。
信者たちの歓声がまだ聞こえる。司祭は上機嫌でさくらの方へ振り向いた。
「よくやりました。信者たちはみんな……」
そこまで声をかけた時——

　「アウロラ様！」
司祭の後ろを歩いていたさくらは、グラリと体を揺らし倒れ込む。
司祭は慌ててその体を抱き留めた。

　司祭の腕の中でさくらはぐったりとしている。
「久瑠美、車いすを！」
「はい！ 司祭様」
控室で待機していた久瑠美はすぐに車いすを持って二人に駆け寄る。
司祭はさくらを車いすに座らせるとその手首に触れた。

　「脈がかなり遅い…。薬が少し強かったのかもしれません」
青白いさくらの顔を覗き込む。
「マインドコントロールも上手く行っているようですし、今日は彼らの心を掴みました。
しっかり女神の役目を果たしておられる」
全ては計画通り順調に進んでいる。
司祭は笑みを浮かべ小さくうなずいた。

　「お前たち、アウロラ様を先ほどの部屋へお連れしなさい」
「「はい司祭様」」
侍女たちは車いすを押し、さくらを部屋へと運んで行った。



　自室へと戻った司祭は祭事用の上着を脱ぐと脱力したようにソファーに座った。

トントン

　そこへ来客が現れる。
「先生。いらしてたのですか」
ドアを開けた司祭はニッコリ微笑むと「どうぞ」と言って部屋へ招き入れた。
「宇賀(うが)、女神が見つかったそうじゃないか」
司祭を宇賀と呼んだ男はそう言いながら、先程司祭が座った場所に腰を下ろした。
「ええ。ようやく計画が進みます」
「我々が革命を起こす時が来たようだ」
男たちは顔を見合わせてニヤリと笑った。

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