ベルモットの憂慮2 ページ25
薄暗い店内。
中央に置かれたグランドピアノに照明が当たっている。
ドレスを着た女性がそっと鍵盤に触れると、どこかで聞いたことがある曲が流れた。
ジャズアレンジされた曲はオリジナルとは一味違うオシャレな雰囲気を醸し出す。
曲に聴き入る者…酒を楽しむ者…ゆったりとおしゃべりを楽しむ者…。
客たちはめいめい夜の時間を楽しんでいた。
ベルモットはピアノの生演奏を聴きながらバッグに手を伸ばす。
細身のタバコに火をつけ、ふ〜っと静かに煙を吐き出した。
時間を持て余すベルモットに、カウンターのバーテンがナッツのサービスを申し出る。雑談をしながら目の前のマティーニに口を付けると待ち人が隣に座った。
「遅かったじゃない。今日は来ないんじゃないかと思ったわ」
「こっちだって暇じゃねぇんだよ」
長い銀髪を揺らし、ジンはそう吐き捨てるように言うとバーテンに向かって手を上げた。
「いらっしゃいませ」
「マンハッタンを」
「かしこまりました」
ジンのオーダーを聞いたバーテンは、すぐに必要な材料をカウンター下へ準備する。カクテルを作る美しい所作を、ベルモットは何となく目で追った。
「で、ラスティーを狙うヤツの事は分かったの?」
グラスの中で揺れるオリーブをピックで弄びながら、ベルモットはジンに問いかけた。
「今あっちこっちの情報屋に当たらせている。
そのうちの一人が何か良いネタを持っているらしい。直々に俺が出向いて話を聞きたかったが、タイミングが悪くてな…。
俺は明日からしばらく日本を出る。そっちはバーボンに任せてある」
ジンはタバコを取り出すとそれを口元に運んだ。
ジジジ…
左手でマッチを擦ると、咥えたタバコの先に火を近付ける。慣れた手つきでタバコを指に挟んだジンは、気怠そうに紫煙を燻らせた。
「安心しろ、ベルモット。後の指示もラスティーへの連絡もバーボンに任せておいた。
フッ。ラスティーも俺から連絡するよりヤツから聞いた方が良いだろ」
何度か煙を吐き出すと、いつもの様に吸い口を噛み潰す。その顔は疲れているようにも見えた。
「ずいぶんお疲れのようね」
一部始終を眺めていたベルモットがそう声をかけた。
「それとも…あの時ラスティーを抱けなくて欲求不満なのかしら?」
ベルモットの嫌味に、ジンの目がギラリと険しくなった。
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aki(プロフ) - レムさん» ありがとうございます!レムさんも色々な方のお話をたくさん読んで研究すれば、きっと書けますよ。 (2021年4月4日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
レム - akiさん» とても作品上手です・・ (2021年4月4日 16時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん!いつもありがとうございます♪続編はちょっとドキドキがあるかも…です(笑)私も気合い入れて書きました。お楽しみに〜! (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - レムさん» 劇場版をどう書くかは色々方法が有ると思います。私は純黒のその後ーという形で使いましたし、他の方のを拝読すると、劇場版の物語に上手くご自身のキャラを織り込んだ小説も有りました。是非上手な方の小説を読んで手法を真似てみるのも良いと思いますよ。 (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - いつもワクワクするお話ありがとうございます!!続編も変わらず応援しています!! (2021年3月17日 13時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2021年1月27日 10時