セーフハウスにて3 ページ3
「ベルモットの手…冷たくて気持ちいい…」
ヒンヤリとして柔らかい女性の手。
不思議と心が安らぐ。
思わずラスティーはその手にすり寄った。
「泣いているの? ラスティー…」
「え?」
泣いている自覚は無かった。けれど確かに涙が零れていた。
「母親の事でも思い出した?」
「……母親? さあ…? 覚えて…ない…わ…」
「え?」
ラスティーの返答を聞いて、ベルモットは聞き返す。
だがラスティーはそれに答える事無く、再び眠ってしまったようだ。
「あなた…母親が…いなかったの?」
ベルモットはラスティーの涙を指で拭ってやると、頭をそっと撫でた。
汗で張り付く前髪をかき上げてやり、濡れたタオルで顔を拭いてやる。
「今だけ…あなたのお母さんの代わりでも良いわよ」
そっとその額にキスを落とした。
**
それから数日間、ラスティーはベッドの中で安静にしていた。
《安静》といっても、熱が下がって普通に動こうとするラスティーを、ベルモットがしっかり見張っていただけではあるが。
今朝は食事を取った後、体についた擦過傷やアザの手当てをベルモットにしてもらう。
「はい、これで終わり。背中の打撲は結構酷かったわね…。血を吐くからびっくりしたわ…。
軽いとはいえ肺挫傷だったのよ。吐血はもう無い?」
ジンの力で壁に叩きつけられた衝撃は凄まじく、
肺の打撲傷…つまり肺挫傷になっていた。
ベルモットのセーフハウスに居る間、数回わずかな量だが吐血している。
最初の吐血でベルモットが驚いてドクターを呼んでくれた。
幸い骨折や組織の損傷は認められず、1度だけ酸素吸入をした以外は、痛み止めを投与してもらうだけで済んだ。
「ん…。もう大丈夫。息苦しさも無いし、痛みも引いたわ…。私意外と頑丈なのかも」
ケロッとした表情でラスティーがつぶやく。
「何言ってるの! 肋骨が折れていなかったから良かったものの、打ちどころが悪ければ折れた肋骨が肺を傷つけていたかもしれないのよ?!
まったくジンのヤツ…仲間相手に加減ってものを知らないのかしら…」
やや怒ったように言うと大きなため息をついた。
あなたの心配だけで胃に穴が開きそうよ、というベルモットを見て、自分のせいで胃を悪くする人がココにも居た…、とラスティーは苦笑いした。
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aki(プロフ) - レムさん» ありがとうございます!レムさんも色々な方のお話をたくさん読んで研究すれば、きっと書けますよ。 (2021年4月4日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
レム - akiさん» とても作品上手です・・ (2021年4月4日 16時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん!いつもありがとうございます♪続編はちょっとドキドキがあるかも…です(笑)私も気合い入れて書きました。お楽しみに〜! (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - レムさん» 劇場版をどう書くかは色々方法が有ると思います。私は純黒のその後ーという形で使いましたし、他の方のを拝読すると、劇場版の物語に上手くご自身のキャラを織り込んだ小説も有りました。是非上手な方の小説を読んで手法を真似てみるのも良いと思いますよ。 (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - いつもワクワクするお話ありがとうございます!!続編も変わらず応援しています!! (2021年3月17日 13時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2021年1月27日 10時