セーフハウスにて2 ページ2
「私の呼吸に合わせて」
言われた通りに吸って吐いてを繰り返す。
「は…、はぁ…ふ…ぅ…は…ぁ……」
「!? ちょ、っと…ラスティー大丈夫?」
呼吸は整うどころかさらに苦しそうに見えた。
「ベ、ベルモッ…、はっ…はぁ…ふ……ぐッ?!」
「ら、ラスティー!!」
ゴホッと咳き込んだ際にラスティーは血を吐き出した。
量は多くないが、口元を押さえた手のひらが赤く染まる。
「す、すぐドクターを呼ぶわ!」
ベルモットが慌てた様子でスマホを手に取った。
ヒューヒューという呼吸音をどこか他人事のように感じながら、ラスティーは目を閉じる。
ごとり…
まだミルクが入っていたカップが音を立てて床に転がった。
***
「……分かりました。連絡ありがとうございます」
安室からの電話を切り、昴は脱力したようにソファーに座った。
「あの…バカッ!!」
膝に肘をつき、両手で顔を覆う。
その手がわずかに震えている事に気付き、思った以上に自分が動揺している事を知る。
安室から『ラスティーがジンに襲われた』と聞いた時は血の気が引いた。恐れていたことが起こってしまったと目の前が真っ暗になった。
バーボンから連絡を受けたベルモットが駆け付け、間一髪『未遂』で終わったと聞くまで、生きた心地がしなかった。
「どれだけ心配させれば気が済むんだ…。しかもしばらくベルモットのセーフハウスに居るだと?!」
なぜすぐに帰ってこないんだと昴は腹立たしい。
『未遂』とはいえ、一体どこまでされたのか…。
確認するまでは落ち着かない。
全ての痕跡を自分が上書きしなければ…
心の中に湧き出るジンへの憎しみと嫉妬心で胸が苦しくなる。
「くそッ!!」
ダンッ!!
ただ待つしかない今の状況に、昴は思わずテーブルを叩いた。
翌日——
ラスティーはいつも以上に重いまぶたを懸命に開けた。
「あら、お目覚め? 気分はどう?」
ベルモットの声が聞こえ、そちらに視線を移す。
頭がぼんやりしているうえに体がだるい。
ようやく視界の中にベルモットの顔を捉えた。
「ラスティー…大丈夫?」
「…ん……ベル……私…」
「少し熱があるのよ。このまま横になっていて」
「…熱?」
どうやら壁に叩きつけられたことが原因で熱を出したらしい。
ベルモットはラスティーの顔を覗き込み、頬に優しく触れた。
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aki(プロフ) - レムさん» ありがとうございます!レムさんも色々な方のお話をたくさん読んで研究すれば、きっと書けますよ。 (2021年4月4日 17時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
レム - akiさん» とても作品上手です・・ (2021年4月4日 16時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» はちみつさん!いつもありがとうございます♪続編はちょっとドキドキがあるかも…です(笑)私も気合い入れて書きました。お楽しみに〜! (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - レムさん» 劇場版をどう書くかは色々方法が有ると思います。私は純黒のその後ーという形で使いましたし、他の方のを拝読すると、劇場版の物語に上手くご自身のキャラを織り込んだ小説も有りました。是非上手な方の小説を読んで手法を真似てみるのも良いと思いますよ。 (2021年3月17日 16時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - いつもワクワクするお話ありがとうございます!!続編も変わらず応援しています!! (2021年3月17日 13時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2021年1月27日 10時