鏡池〜奥社2 ページ44
「ス——…ハ——…ス—ッ…ゴホッゴホッ!」
「何やってるんですか?」
数回深呼吸をして咳き込むさくらに昴は声をかけた。
「ごほっ! く、空気冷たすぎっ…。むせちゃったッ! ごほほっ」
冷たい空気を肺の奥まで吸い込み過ぎてむせてしまったようだ。
「だいぶ気温が低いですからね。さくら寒くないですか?」
さっきまで晴れていたが鏡池に近づくにつれ、霧のような雲が立ち込める。
「ちょっと寒いかな。でもキレイだね〜。なんか…神聖な感じがする」
「確かに。天の岩戸伝説の地ですからね。神の国ですよ」
話をしながら昴はスッと左手でさくらの右手を掴む。
「す、すば…」
「手…冷たい。歩くうちに体は温まるでしょうけど。それまで手、繋いでいてあげますよ」
「……温まっても…繋いでて良いよ……」
「……それは…誘っているのですか?」
「ね、ねえ見て! ほら! 白樺の紅葉キレイだね〜」
ごまかすようにさくらは紅葉に目を向けた。
やがて視界が開ける。
「わあぁ〜!」
「すごいな…」
先程までの霧はどこかへ消え去り、目の前には鏡のように上下反対に景色を映した水面。
赤や黄色の紅葉と、青い空が見事なシンメトリーとなって二人の前に現れた。
http://uranai.nosv.org/uploader/common/e/f/5/ef537d4813b859a047e01f5a62ef81a2.jpg
「これが…鏡池…」
「紅葉の時期が終われば間もなく雪が降って、池は完全に凍り付く年もあるのだとか」
「ええ〜。紅葉の時期って短いから、この景色は今しか見れないって事よね」
二人は手を繋いだまま景色を見つめる。
「また…あなたと美しい景色を見た思い出が出来ましたね」
「うん。秀一さんと見た景色は、絶対に忘れない」
「私もです」
繋いだ手に力が入る。
突然昴がその手を強く引いた。
「え?」
周りに人はいない? とか
神の国なんじゃないの? とか
考える余裕もないまま二人の唇がぶつかる。
さくらがそっと食むように唇を動かすと、そのまま深く口づけられた。
繋いだ手はそのままに。昴の右手がさくらの頭を支える。
ちゅ、ちゅ、くちゅ…
湧き上がる熱を感じながら、お互いを求めて唇をついばみ舌を絡めあう。
ザザザ〜ッ!
突然冷たい風が吹きつけた。
ハッと我に返った二人は唇を離す。
「スミマセン…。つい…」
「う、ううん。大丈…夫」
今更ながら周りをチラリと見回す。
まばらに観光客が居たが、二人がいたところは草木が影になっていて誰からも見えなかったようだ。
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aki(プロフ) - はちみつさん» ありがとうございます!2章ではあんなことこんなこと(///∇///)少なかったですが2.5章は……キャッ♪頑張りたいと思います!4.5章では写真もアップしたい!出来るか心配ですが…。赤井さんのカッコ良くてカワイイシーンをお楽しみに〜! (2020年11月24日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - 少し遅くなりましたが四章完結おめでとうございます!別サイトの方も拝見させて頂いています。こちらでは描かれていなかった、あんなことやこんなこと///にキュンキュンしながら楽しませて頂いています。4.5章もあの写真の風景がどこに出てくるのか楽しみにしています (2020年11月24日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» わぁ嬉しいです!私もこの章を書き始めた時はそこまで詰めてなくて、書いてるうちに繋がって…私も『うわぁぁ』ってなってました(笑)4章もあと数話で完結ですが、その後もちょっとユルい中編〜本編へと続きます!個人サイトにも写真や日記有りますのでそちらもぜひ〜! (2020年11月17日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!色んなことが繋がっていって、1人でうわぁああ!ってなってます(笑)冴島さんの優しさにも昴さんの優しさにも胸がきゅーってなりますね(涙) (2020年11月17日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2020年10月20日 11時