戸隠へ3 ページ41
「お前の前では…カッコ悪い俺を見せてるよ。感情をむき出しにして怒ったり、涙したり、笑ったり。
お前の前でだけ…俺は素直になれるんだ…」
スルリとさくらの両手を掴むと、組んでいた手を引き離し、そのままくるっとさくらの方へ向き直る。
「だから…こんなカワイイ事されると困るんだ。旅行の時くらいカッコ良い俺でいたいのに…。このまま押し倒したいって思ってしまう」
今度はお互いの方を向いて抱き合った。
さっきよりも鼓動が大きく聞こえる。
「……りお…愛してる」
(このタイミングでその名前で呼ぶの…ずるい…)
さくらは赤井の匂いとタバコの匂いがする昴に、ぎゅっと抱きつく。
二人が抱き合う姿を、中社の三本杉がざわざわと風を受けながら優しく見守っていた。
中社で参拝をしてお土産屋さんをのぞいた後、二人は蕎麦屋に入る。
「戸隠蕎麦って名前くらいは聞いたことあるけど、実際食べるのは私、初めてなんだよね」
「私も初めて食べますよ。ガイドブックによると蕎麦の盛り付け方も特徴があるそうです」
「へぇ〜。楽しみね!」
ガイドブックを広げ、次に行くところの話をしながら二人は蕎麦を待っていた。
「天ザルお待たせしました〜」
元気な店員さんが、トレーに載せられた蕎麦を二人の前に置いた。
http://uranai.nosv.org/uploader/common/2/f/7/2f7b33c434b3d6a8f54ed03bfeb3751b.jpg
「わぁ! すごい!」
「これは…きれいですね〜」
竹細工の美しいカゴに季節の天ぷらと、同じく竹細工のザルには、一口分ずつクルリと丸められた蕎麦が5束並んでいる。
「これは《ぼっち盛り》といって、この地方に伝わる伝統的な盛り方です。戸隠では《一人前5ぼっち》としていて、この『5』という数字は戸隠神社が5社ある事に由来する、という説が有るんですよ」
店員さんの説明に二人は目を丸くする。
さあ、天ぷらが冷めないうちにどうぞ、といわれ二人で箸を取った。
「「いただきます」」
ズルルル〜ッ
さくらは勢いよく蕎麦をすすった。
「ん〜。美味し〜い! 香りも歯ごたえものど越しも絶品だわ!」
東京でも蕎麦は食べられるが、これほどの味にはなかなか出会えない。さくらはのみ込んだ後の香りの余韻に浸る。
うん。すごい。ここのお蕎麦美味しすぎ。
まさに目で楽しんで口で味わって、のど越しを楽しむ。これ以上の贅沢はあるだろうか。
ふと前を見ると、なぜか悪戦苦闘している昴がいる。
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aki(プロフ) - はちみつさん» ありがとうございます!2章ではあんなことこんなこと(///∇///)少なかったですが2.5章は……キャッ♪頑張りたいと思います!4.5章では写真もアップしたい!出来るか心配ですが…。赤井さんのカッコ良くてカワイイシーンをお楽しみに〜! (2020年11月24日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - 少し遅くなりましたが四章完結おめでとうございます!別サイトの方も拝見させて頂いています。こちらでは描かれていなかった、あんなことやこんなこと///にキュンキュンしながら楽しませて頂いています。4.5章もあの写真の風景がどこに出てくるのか楽しみにしています (2020年11月24日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» わぁ嬉しいです!私もこの章を書き始めた時はそこまで詰めてなくて、書いてるうちに繋がって…私も『うわぁぁ』ってなってました(笑)4章もあと数話で完結ですが、その後もちょっとユルい中編〜本編へと続きます!個人サイトにも写真や日記有りますのでそちらもぜひ〜! (2020年11月17日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!色んなことが繋がっていって、1人でうわぁああ!ってなってます(笑)冴島さんの優しさにも昴さんの優しさにも胸がきゅーってなりますね(涙) (2020年11月17日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aki | 作成日時:2020年10月20日 11時