ペリドットとアンバーvol.12【名探偵コナン】【赤井秀一】【沖矢昴】【安室透】

冴島の告白４ ページ27

　「俺は一真に『今すぐ逃げろ』と詰め寄った。だが一真は――
『りおが男を目撃したのが今日の昼前。このまま何もしなければ、ターゲットは夕方にはその車を使うんだぞ！ その時間公園周辺にはたくさんの人がいるんだ！』
そう言って秘密裏にターゲットと接触し、車の使用を止めさせたんだ。
そして爆破予定時間までには爆破物処理のエキスパートを一人手配して、仕掛けられた爆弾まで回収していた。
一真の仕事の速さは目を見張るものがあったよ」
冴島は少し誇らしげに語る。
そこまで話すと冴島は目を閉じた。
一度だけ大きく深呼吸すると表情が曇った。

　「公園の爆破未遂から2日後。一真は家族を連れて東京脱出を決行した。前日にお前には俺から『パパが水族館へ連れて行ってくれるって言ってたぞ』と伝えたんだ。久しぶりに家族で出かけられると聞いて、お前は大喜びだった。その時の笑顔…今でも忘れられないよ…」
冴島は悲しげに微笑み、りおの顔を見つめる。
　
　「早朝、一家は家を出た。家を出てすぐに一真は車に仕掛けられた爆弾に気付いた。それを外して……3人は車に乗り込み、東京を出たんだ。
　しかし…海まであと少しという山間の道で、組織の車3台に囲まれた。そこで銃撃を受けたんだ」
「ッ！」
両親の死の場面が近づく。
直感的に察したりおは息を飲んだ。

　キキキ〜ッというタイヤの鳴る音が聞こえた気がした。
酔いそうなほど荒々しい運転。右に左に体を振られ、その度にタイヤが鳴る。

　思わず両手で耳を塞いだ。
心がざわつく。

「はっ！ はぁっ！ はっ！」

　呼吸が乱れる。
息が出来なくて苦しいのか、かつての心の痛みを思い出して苦しいのか…分からない。
ただ張り裂けそうな胸の痛みに、うずくまった。
その体はガタガタと震えている。

「りおっ！」

　昴がすぐに肩を抱き寄せ、背中をさすった。
「ゆっくりだ…あわてるな…ゆっくり吐いて…吸って…」
昴の指示に合わせるように呼吸を整える。
尚も震えている姿を見て、昴は自分の胸元にりおの耳をつけるように抱きしめた。
右手でりおの頭を抱え、左手で腰のあたりをポンポンと優しく叩く。昴の鼓動を聴かせ、りおの気持ちが落ち着くまで、そうやって抱きしめていた。

　やがて呼吸が整ったりおは、ゆっくり体を起こした。

　「スミマセン…。もう大丈夫です」
りおは額の汗を拭うと、再び冴島の顔を見た。
冴島は心配そうにりおの顔を見つめた。

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