逮捕〜別れ5 ページ21
それから数十分後ーー
昴はさくら・安室のふたりと近くの病院で合流した。
3人は救命救急の待合で互いに黙ったままだ。
カーテンの向こうでは次々と指示を出す医師の声と、けたたましい医療機器のアラーム音が聞こえる。
さくらは祈るように胸の前で両手を組み、切なげにそのカーテンを見つめていた。
やがて救命の処置室に3人が呼ばれた時には、先ほどまでの緊迫した雰囲気はなく、眠っているように見えるカーディナルと点滴やモニターを外す数人の看護師たち、沈痛な面持ちでそれを見守る医師が一人いるだけだった。
「…残念ですが…」
しばらく沈黙したのち、その医師が声を発した。
「死因は食道静脈瘤の破裂によるものです。患者さんは肝臓がんを患っていたようです。すでに余命は……」
カーディナルの死因について詳しい説明をされたが、何一つさくらの頭には入ってこない。
ぼんやりと部屋の中を見回した。
床にはたくさんの血液が飛び散り、血まみれのガーゼがいたるところに落ちている。
カーディナルの顔に着いた血は、乾いて黒く変色していた。
「カー…ディナ……」
血を吐いたにもかかわらず穏やかな彼の顔を見て、りおはその名を呼ぼうとするが、最後まで声を出すことが出来なかった。
その代わりに涙が溢れだす。
「な…んで…病気…だなんて…言わなかった…じゃない…。ただの…風邪だって…」
泣きながらさくらは呟いた。
目の前にある現実を受け入れられない。
「さくら…」
昴も安室も、なんと声を掛けて良いか分からなかった。
昴は後ろからそっとさくらの肩に触れる。
さくらは振り向き「昴さん…」とだけ言うと、
彼の胸にすがって泣いた。
昴は黙ってさくらを抱きしめる。
(泣きたいだけ泣けばいい。ため込まずに…心の中にあるものを全部吐き出せ)
昴はそう心で念じながら、長い時間さくらを抱きしめ続けた。
(その男が親の仇であっても…その死を悼んでやることが出来るのか…)
安室は抱き合う二人を静かに見つめていた。
39人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aki(プロフ) - はちみつさん» ありがとうございます!2章ではあんなことこんなこと(///∇///)少なかったですが2.5章は……キャッ♪頑張りたいと思います!4.5章では写真もアップしたい!出来るか心配ですが…。赤井さんのカッコ良くてカワイイシーンをお楽しみに〜! (2020年11月24日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - 少し遅くなりましたが四章完結おめでとうございます!別サイトの方も拝見させて頂いています。こちらでは描かれていなかった、あんなことやこんなこと///にキュンキュンしながら楽しませて頂いています。4.5章もあの写真の風景がどこに出てくるのか楽しみにしています (2020年11月24日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
aki(プロフ) - はちみつさん» わぁ嬉しいです!私もこの章を書き始めた時はそこまで詰めてなくて、書いてるうちに繋がって…私も『うわぁぁ』ってなってました(笑)4章もあと数話で完結ですが、その後もちょっとユルい中編〜本編へと続きます!個人サイトにも写真や日記有りますのでそちらもぜひ〜! (2020年11月17日 15時) (レス) id: 7b3007e7f7 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ(プロフ) - こんにちは!色んなことが繋がっていって、1人でうわぁああ!ってなってます(笑)冴島さんの優しさにも昴さんの優しさにも胸がきゅーってなりますね(涙) (2020年11月17日 14時) (レス) id: 47bbcb1aa7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aki | 作成日時:2020年10月20日 11時