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入校するまでの期間、最後の春休みということもあり、萩原やAと過ごすことが多くなった。
「おはよー」
「遅いぞ、ハギ」
「お前らの家が近すぎるんだよ」
並んだ二人は各自ストレッチをしながら、松田を見下ろしていた。
春が近づき、日中は薄らと汗ばむくらいの気温だった。
三人皆同じ道に進むと分かり、萩原の提案で入校前に少しは身体を鍛えておこうと定期的に近くの公園に集まるようになった。
「父さんが私達を担当する教官に厳しくするよう言っておくってさあ。
ほんと余計なことするよね…」
「面倒臭え…無茶苦茶厳しかったらお前のせいだからな」
「松田こそ反感買ってやらかさないようにね」
Aは眉間に皺を寄せた後、松田の背中を強く押す。
「いだだだだそれ以上前にはいかねえって!」
「柔軟は大切だからー」
「お前っわざとだろっいづづづ…」
Aと頻繁に会って分かったことがある。
「Aちゃんと陣平ちゃんが仲良さそうで妬いちゃいそうだ」
自分とこの女は相性が合わないということだ。
いくら共通する友人、仲の良い友人が一緒だったとしても、必ずしも互いの関係が上手く行くかといえばそういうわけではない。
松田が目の敵にしている警察組織に所属する父を持つというだけでも腹が立つのに、彼女は入学する前からその組織への忠誠心が高い。
それは父譲りという点では仕方がないが、理由がどうあれ共に入庁する松田達も同様と思っている節がある。
だからこそ、女は萩原の自主トレの申し出も快く受け入れていた。
(入学して早々、お前らに置いて行かれんのは癪に障る。特にこの女には)
性別分けての採用だ。
それぞれ基準は違うとはいえ、やはりどこかAを敵対視してしまうのだ。
「そんじゃまた15分後に」
三人一斉にスタートし、公園の周りを走る。
何週かしてAを追い抜かし、思わず口元が緩む。
「大人気ないぞ、陣平ちゃん」
自分が子供っぽいところがあるとはいえ、Aの肩を持つ萩原に少しむかついた。
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作者名:Nattu | 作成日時:2024年2月20日 1時