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「ごめん、待たせた。
スーパーが混んでて」
そう言い、彼女は家の前に現れた。
人がくることは早々なく、ばたばたと片付けた空間にAは気にすることなく座った。
「これがご注文の品でーす」
そう言いながら、酒や菓子などが並んでいく。
近くで見たAの瞳の上はきらきらと輝いていて、
(俺のために…いや休みだからお洒落したいだけだな)
心の中で言い聞かせながら、彼女から物を受け取る。
「「乾杯」」
流れるように宴は始まり、学生の頃の話でも、警察学校の話でもない。
案の定今の仕事の話だ。
それならば別に職場でもいいじゃないかというのは分かっているのだが、それだけではと感じる自分がいる。
(ただの高校からの腐れ縁。友人の紹介)
そう何度も何度も唱えるように意識しながら、Aと会話を続ける。
しかし、彼女はそれを気づかぬまま超えてくる。
松田の煙草が切れたのを見て、頼まれた追加の煙草の箱を手渡してきた。
その箱は、松田が愛用している銘柄だ。
メールに煙草と書いたものの、種類の指定はしていない。
「ほんと、厄介」
「は？」
「いや。なんでも。こっちの話」
首を傾げる彼女を無視し、酒を飲み干した。
そして、酔った勢いで賭けに出る。
「お前、ここにいていいの」
「なんで？」
「いや…彼氏とか、いねえのかなって。
いるんなら、そいつに悪いじゃん」
Aの目が何度か瞬きされた後、弧を描く。
「さすがにいる状態だったら断ってるよ。
残念ながらそういう人はいませーん。
仕事が恋人です」
Aはあーあと声を上げ、ポケットに手を突っ込む。
事態を察知し、立ち上がってベランダの鍵を開けた。
彼女は煙草を咥え、眉を下げ肩を竦めた。
Aに促されるようにして、松田もベランダでAと並んだ。
咥えた煙草は机に置かれた彼女の箱から取り出したもの。
少し甘い香りのする苦い煙。
(煙草の趣味は合わねえや)
沈黙が続き、ただ二人で煙を吐くだけ。
お互い同じタイミングで吸い終わる頃になって、
「気づかないと思った？
今度は松田のやつ、私に頂戴よ」
掌を見せて、悪戯っ子のように笑った。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
