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休みのはずなのに、目が冴えてすぐに起きてしまう。
携帯電話の画面を見て
(まだ…寝れる)
そう言い聞かせて布団の中に潜り込もうとするも、心臓はどっとと音を立てて騒がしい。
「んあー…もう」
ぼさぼさの頭をさらにかき乱して、また携帯電話を見つめる。
もうそこには一通のメールがあって。
『ビールがあればいい。あと煙草もよろしく』
彼は自分が寝ている間にメールを送ってきていた。
集合時間まで十分に時間はある。
それに、わざわざ休みの日に会わなくても職場に行けば嫌でも顔を合わせる。
いつも通りでいいはず。
それでも、浮足立ってしまう自分を押し殺すように、わざとらしくがちゃがちゃと音を立ててメイクポーチに触れる。
そんな時だ。
「やほーAちゃん」
楽しそうに笑う幼馴染が電話をかけてきた。
スピーカーにし、化粧を進める手を止めず耳を傾ける。
「せっかくならAちゃんと同じ配属先が良かったけど、実家の住所があんだけ近いと結構仲いい関係っていうの分かっちゃうよねー」
「元から交友ある人同士を配属しても新しい人間関係、生まれないしね」
「そうなんだよねえ。だから、陣平ちゃんと俺も離されたんだろうけどさ。
んで、どう？そっちは？」
「…んまあ、ぼちぼち」
上手く答えられず言葉を濁す。
アイシャドウを乗せる手に集中させ、話半分になっていく。
「へえ。二人のことだから、結構仲良くやってんでしょ？」
「どうなんだろね」
そう答えると、萩原は大きく息を吐いて小さく笑う。
「高校生の時の二人なら、Aちゃんは迷いなく、
そんなことないよっていいそうだけど、否定しなかったね」
自分のことをよく知っている彼は、痛いところを突いてくる。
少しだけスピーカーの音を下げた。
「研二はどうなの？」
「こら。すり替えんな。
今はAちゃんと陣平ちゃんの話」
逃がそうとしない彼に話をしまいと、唇にリップを押し付ける。
一通り塗り終えて、わざとらしく溜息をついてから、
「研二の友達だし、
別に悪い人じゃないと思うよ」
返事にもなっていない言葉を吐けば、
「そうだよ。だからAちゃんと上手く行けばいいのにって思ってた」
と楽しそうに彼は言った。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
