25.police box 01 ページ25
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配属されて数週間が経った。
運がいいのか職場の人間関係は良好で、上司は皆手厚く教えてくれた。
どれだけ訓練されていても、教官達から伝え聞いていたとしても、現場の空気感は違う。
のんびりとした日であってもどこかそこに緊張感は漂っている。
そんな中で様子が異なる男が一人。
「まじ眠ぃ…」
「少しは気ぃ引き締めてくんない？」
「今は特になんもねえんだから大丈夫だろ」
大きな欠伸を一つして、椅子に座る。
怒られるのではないかと思わず周りを見たが、ちょうど上司は化粧室に入っていて姿を消していた。
ほっと胸を撫で下ろしていると、
「最近」
珍しく松田の方から口を開く。
少し驚いたが、そう見えないように書類を書く手を止めないまま耳を傾ける。
「化粧、してねえだろ」
「は？」
「学校にいた時は少なくとも眉だけでも書いてた気がするけど」
あまり人のことを気にしていないと思っていたが、彼の観察力は高い。
とはいえ、していないという事実はAが気にしていた部分でもあって。
本当はそういうところに気を遣うべきなのは十分には分かっていた。
だが、新生活が始まり、体力を温存することで精一杯で身の回りのことはできていなかった。
とりあえず寝ぐせを整えて、どうせ化粧は汗で落ちるんだからと見ないようにしていた。
要するに都合のいい言い訳だ。
「一応職場なわけだし、やったほーがいいんじゃね？」
「…そだね」
松田の言う通りだった。
わざわざ言わなくてもいいではないか、そう思いながらも何も言い返す言葉もなく返事をするだけ。
きっと彼は思ったことを言っただけなのだ。
ちらりと松田を見ると、いきなり目が合って互いの目が大きくなった。
彼はすぐに目線を逸らして、化粧室に入ったままの上司がまだ来ないのを目視して、
「…そーゆー何もつけてない顔は、親しい奴だけの前にしとけば」
と投げ槍に言った。
「じゃあ」
その言葉に、
「松田なら、いいや」
相手の出方を伺いながら呟く。
自分から言ったにもかかわらず、相手の顔が見れず手元の書類に戻す。
親しい人。
彼にとって自分が親しい人、どういう存在なのか、少し興味が出ただけだ。
そんないたずら心で生まれた言葉に、
「…そ。
ならいいけど」
松田も意味深な言葉を吐いて返してみせた。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
