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いつも着ているはずの制服は心なしか重く感じる。
そして、皆どこか緊張した顔つきをしている。
(そんなに気ぃ張らなくてもいいのに)
ちらりと見たAもきっと同じと思っていた。
「陣平ちゃん？そろそろ始まるぞ」
「…あっ、ああ」
緊張もしている顔だったが、それよりも違和感を感じた。
そのせいか式典が始まるまでの空き時間の喫煙所に、常連の彼女の姿はなかった。
各署の名前が呼ばれ、あっという間に自分達の番に。
ちらりとAを一瞥したが、まっすぐ見たままだ。
その目はいつもより冷ややかな気がして。
(急にどうしたんだよ)
見たことのない顔に動揺し揺さぶられる。
式典は終わり、別れの余韻を惜しむ時間も少なく自分達の荷物は迎えにきた配属先の署員の車に積んでいく。
「松田、最後に写真撮るってよ」
諸伏に呼ばれ、降谷達四人と並ぶ。
今まで学校内を荒らしてきた集団だ。
ここぞというばかりに教官達が集まってきてどやされる。
その隙間から、
(なんでそんな顔してんだよ)
仲の良い同期と写真を撮り合うAが見えて。
気をとられていると、萩原達にのしかかられて不格好な写真が撮られていた。
それを皆げらげらと笑って、教官達は楽しそうに手を振っている。
(待てよ、俺はまだこいつと)
「陣平ちゃん」
不意に萩原に呼ばれ、我に返る。
彼はAと同じ目をしていた。
「今はやめておこう。あの子に任せておいた方がいいよ」
「何が…」
そう言うと、彼女の幼馴染は大きく溜息をついた。
そうしてAと、もう一人を愛おしそうに見た。
「陣平ちゃんや俺とは違うんだよ。
街を守る勇敢な存在になりたくてここにきてるんだ。
だから卒業できる喜びや寂しさより、きっと不安の方が上なんだ。
学校という守られた箱の中にいたのに、いきなり外に出て市民の前に立てっていわれんだから」
萩原は自分の携帯電話を操作し、画面を見せてきた。
そこに映っていたのは幼いAと萩原の姿だ。
その真ん中には彼女によく似た大柄の男がいて、元気よく彼らは敬礼している。
「Aちゃんは特にそう感じてるはずだよ。
ここでもずっと親父さんのこといわれっぱなしだったから、外だったらなおさらだろうね」
ぱたんと携帯電話を閉じて、彼は小さく頭を下げる。
「幼馴染を頼んだよ、陣平ちゃん」
そう言って、垂れた目を少しだけ吊り上げた。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
