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「え…」



「陣平ちゃんどしたー?」



「いや…別に」



卒業式間近になり発表される配属先。
最初は交番勤務と聞いていたが、自分の勤め先の管轄署の名簿にその名前はあった。



(Aと一緒なのかよ)



式では同じ配属先の者同士で宣誓をしなければならない。
嫌いな組織の中でどこで働こうが問題ないが、Aと同じということはなんとなく嫌で。
特にそれを周りに言わなければならないという状況が心底嫌だった。



「お、俺と陣平ちゃんは違うとこかー。


まあ最初だし仕方ないよな!


そのうち機動隊で一緒に頑張ろうぜ!」



まだ決まってもない未来のことを彼は意気揚々と語り、肩を組んできた。
それを振り払い台本用紙をくしゃくしゃにする。

そんな様子を見て、萩原は改めて紙を見返して、ああと声を上げた。
そしてまた肩を組まれる。
先程よりも腕は厭らしく絡みついて、顔を見なくても分かるくらいににやにやと笑みを浮かべていた。



「なーるほどねえ…Aちゃんと一」



「何であんな奴と」



「あんな奴、ねえ」



楽しそうにしたまま、彼はそろりと腕を抜く。
もう少しで式典の練習が始まる。
わざとらしく音を立てて練習場所に向かった。

綺麗すぎるくらいに並ぶ整列にも、素早い造作にももう慣れた。
慣れたというよりも身体に染み込むくらいにやらされた、そう言ってもいいくらいだ。
最初は背の順に並んでいた列も配属先発表となり、各署が名前を呼ばれていくごとに仲間はその列から抜けていく。

自分のことばかりで萩原達がどうなったかなんて見てもいなかったが、どうやら降谷、Aのルームメイト、萩原のトライアングルは上手い具合に違う部署に別れたらしい。
恐らくそこの関係性は観察力がある上からすれば、周知の事実だったのだろう。
それに降谷とその女の成績は同じくらいだ。
バランスを考えるとこうなるのも当然だ。

自分の配属先が呼ばれる。



「「はいっ」」



列の端からAが飛び出してきて、二人で学校長の前に立つ。
まだ卒業式ではないというのに、走馬灯のようにAとの思い出が蘇ってきて、



(うるせえ。邪魔すんな)



歯の奥を噛みしめた後、Aに続けて棒読みの言葉を吐く。
宣誓が終わり列に戻る時、少しだけ彼女を見たが、




(んだよ。…俺だけかよ)




こちらを見ることなく真っすぐ元居た場所に戻っていった。


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作者名:Nattu | 作成日時:2024年2月20日 1時

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