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親友が呆然と立ち尽くしたまま、幼馴染に声をかけるのが見えた。
最近、彼らの中で何かが動き始めていたのは感じていたが、実際にその様子を見たのは初めてだった。
「どーせ、得意の射撃の順位が下がったことが許せねえんだろ？」
そう彼が投槍に言うと、女は大きな溜息をついた。
喫煙所の近くの柱越しに彼らの会話を聞く。
耳だけをそちらに傾けて、身体は柱に貼り付けたまま。
「しょうがねえよ。降谷って野郎は何でもできる奴らしいし。
俺達凡人とは違うぜ」
(言いすぎだろ)
いくら親友といえども傷ついた心に塩を塗り付けるような言葉だ。
Aの顔は見えないが、言い返さない辺りかなり堪えているだろう。
「お前は最初からできる位置にいたわけだし、
十分そのあたりは優秀なんじゃね」
松田、そう声を掛けて飛び出そうとした時だった。
「…でも。
Aはやっぱ俺と違う。
ただの凡人じゃねえよ」
不意に彼は落ち着いた声で言った。
「抜かれたっつーても全体から見て二番目。
そんな中で、頭の部分じゃあ俺と下位争いしていた癖に勝手に上に行きやがって」
嫌そうに言った後、松田が動き出す気配を感じた。
彼はまだ吸い始めたばかりの煙草を揉み消して、そそくさと出ようとしていて、
「…ふふ。それ言いにわざわざ誘ってくれたの？」
それまで暗い雰囲気だった空気が和やかになる。
松田はそれに返事をするでもなく、足を止めたまま。
Aの方を向こうともしない。
「ありがと。
私が学科試験、頑張れたのは松田のお陰だよ。
入校前に…
松田に勝ってやるって話したでしょ」
女の強気な言葉に、松田は歩き出して、
「よくもまあそんな話を覚えてやんの」
嬉しそうに出て行った。
残されたAの方をちらりと見れば、彼女も同じ顔をしていて。
(…なんだよ、俺を置いてけぼりにして勝手に仲良くなりやがって)
松田とAはどこか似ている気がして、波長が合っていると思っていた。
ずっと叶えばいいなと思っていたことがすぐ傍に来ているような気がして、少し寂しくなった。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
