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試験に資格取得。
やらなければならないことに追われているうちに、いつの間にかもう卒業間近だった。
(…やっぱすげえや)
壁に貼られた射撃の順位表には、教官達から一目置かれる降谷の下にAの名前がある。
何も技術がないとはいえ、最初から安室や諸伏はその頭角を見せていた。
最初から射撃技術があるAとは違い、伸びしろがあり向上心も高いはずだ。
それに負けじと彼女は食らいついていた。
一度もその成績を抜かれることなかったが、最後の最後でその順位は抜かれてしまっていた。
その分Aの学科試験の順位は大幅に上がっていた。
ずっと下の方で松田と争っていたのが嘘のように、降谷とまではいかないものの優秀な諸伏の名前と並んでいた。
ただただ反抗するためだけに入った自分とは違う。
似た者同士だと勝手に思っていたのは松田だけで、Aはこの組織に相応しい人間なのだと思った。
少し寂しいと感じていた。
「A、元気出しなってえ…」
「わかってるよう」
順位表が張り出された部屋の端っこで、小さく座る彼女とそれを宥めるルームメイト。
Aの隣でおどおどとする女は頭がよく、学科試験では常に降谷と並ぶ優等生。
とはいえでも努力することは欠かさず、その地位は保たれていて、男女問わず憧れの的。
そんな彼女に言われたところでAにとっては効果はあまりないだろう。
それどころかますます負の感情を強くさせてゆく。
「ほんとAは凄いよね!
ずっと弓道頑張ってたんでしょ!?
道具は違えどずっと上にいるなんてさ!」
「…うん」
ついこないだまでは一位だった、垂れた前髪の隙間から悔しそうな目はそう言っている。
少し空気が重くなったタイミングで、ちょうど彼女の親友は仲間に呼ばれていく。
卒業間近で所属する委員の仕事が忙しいらしい。
一人取り残すAを名残惜しそうに見た後、急ぎ足で仲間の方へとついていった。
(あー…だる。またこの感じ)
面倒臭くて逃げ出そうとした時、Aが大きな溜息を一息ついて勢いよく立ち上がる。
そして、松田と目が合って。
「……お疲れ様」
男がずっとここにいたことに気が付いて、気まずそうに目を逸らす。
対抗するようにして溜息を吐いて、
「…そろそろ煙草切れんだろ。付き合え」
Aの顔を見ずに部屋を出た。
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作者名:Nattu | 作成日時:2024年2月20日 1時