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「お、おかえりー」
教官室を出ようとした時、ちょうどよく見回りから帰ってきた萩原と降谷に遭遇する。
彼らはそれぞれ定位置に行き業務についた。
とはいえ、校内は休日でのんびりとしている。
今日の当直担当の教官は彼らの中でも一番優しいといわれている人間だ。
休みということもあり特段彼らに叱ることもなく、テレビをぼんやりと見ていた。
「お疲れ様」
Aは萩原に少し声をかけてすぐに出ていく。
男は嬉しそうに女の背中を目線で追った後、
「教官に頼まれただけだぞ」
「俺何も言ってないじゃん」
嬉しそうににこにこしながら、自分の肩に手をぽんと置く。
帰る前に煙草を吸ってきたというのに、もう煙を欲しているようなそんな感覚に陥る。
「萩原、夕飯の注文するか皆に聞いてきてくれ」
親友の絡みがうざったいと感じていると、優等生の彼は眉間に皺を寄せながら萩原を引き剥がした。
彼は仕方ないといったように肩を落としながら、バインダーを持って外に出ていく。
すれ違いざまに、
「また後で教えてよ」
と零して舌を出した。
萩原が出ていったのを見送り、大きな溜息をつく。
自分の名前と返し忘れたAの名前札をひっくり返して、教官室を出ようとした時、
「いいねえ。若いもんは」
教官はのんびりとした口調でテレビを見たままそう言った。
「違」
否定しようとした時、彼は笑みを浮かべてこちらをちらりと見た。
(あー…うっざ)
無視して出ていくのは人として良くない気がして、黙ったまま目を逸らす。
その辺にあるバインダーをとって、何も書くこともないのに書く振りをして視線が逸れるのをやり過ごす。
「たまにはそういうこともあってもいいと思うぞ」
「特別周りから指摘されたら、俺からは高校からの付き合いで仲いいそうなとでも伝えておくわ」
彼はまるで自分達の間にそういう感情があるように話をしてくる。
いろいろと言われ、やっと視線がテレビに戻ったところでバインダーを置き部屋を出ようとした時、
「Aはエリート刑事のご子息だからねえ、上はやっぱり高く評価するよなあ」
「…エリートエリートってA自身の能力より父親の能力を出すのはどうなんでしょうね」
彼の言葉にいらっとしてしまい、つい小言を吐いてしまう。
失礼な物言いだと思ったのか、教官だけでなく降谷の視線も背中に感じて、
(ほんとうぜえな、この組織)
舌打ちして自室に足を向けた。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
