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「はい！そろぼち喫煙タイムです！」
フードコートで一息ついていると、Aは小さく手を上げて悪戯っぽく笑った。
学校外で時間の縛りもない。
自由に吸える環境ということもあるが、どうやら彼女は自分よりも吸う頻度が高いらしい。
「今、座ったばっかじゃねえか。
せめてこれ飲んでからにしようぜ」
そう言い、ファーストフード店で買ったジュースに口付ける。
入校して食べる時間があまりないせいか、二人のトレイの上はとっくに前に空っぽになっている。
Aはのんびり飲む松田を見て、つまらなそうに肘をついて携帯電話を弄り始めた。
「お前、打つの早いな」
「そう？」
女は松田を見ずに携帯電話を触り続ける。
(俺も早い方だと思うんだけどな)
機械弄りが趣味なのもあって、操作は自分が一番早いのではないかだなんて思っていたが、居の中の蛙だったらしい。
「ふふ」
急にAは笑みを零し、画面を松田に見せつけてきた。
そこに映っていたのは萩原の姉の写真だ。
嬉しそうに白バイに乗り片目を閉じている。
「どう？大好きな千速さんを久しぶりに見て」
「るせーよ。どうってことねえよ」
「あら。あんなに好き好きモードだったのに」
学生の時にAに千速のことを打ち明けたことはない。
それなのにもこうして弱味を握られていることは癪に障る。
無理矢理携帯電話を押し返して目を背けた。
「やっぱかっこいいよねー白バイ」
「何、お前、将来交通課行きたいの？」
「いや？そういうわけじゃないけど」
週末のがやがやとした空間でAの声だけははっきりと聞こえてくる。
初めて彼女と将来といった深い話をした気がした。
「松田は？」
「お前から先に答えろよ」
そう言うとAは口を尖らせながら、また携帯電話を弄る。
すぐに松田の携帯電話が震えて、
『刑事課』
そう書かれていた。
何で直接言わないんだ、と言おうとした時、
「あんまり外で仕事の話するの良くないでしょ」
Aは残りのジュースを飲み干して、また携帯電話を触る。
自分と似ていると思っていた矢先、やはり信念があるこの女が少しだけ羨ましくなった。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
