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目をきらきらとさせながらプラモデルを見る男が一人。
(その辺の小学生と変わんないな)
Aの冷めた目を気にせず、男の両手には玩具の箱があった。
正直教官から良い機会を貰ったと思った。
これまで関わりの薄かった松田とようやくいろいろ話せるかもしれない、そう思ったからだ。
研二と仲の良い彼に興味がなかったわけではない。
ただ会話するきっかけがなかった、それだけだ。
『陣平ちゃんとAちゃんってほんと話さないよねー、俺という共通の友達がいるのに』
いつも萩原はそう言っていたが、お互いに自分から喋り出すタイプでもなかったため交わることはなかった。
成人して、煙草という武器をもつまでは。
「今買っても取り上げられるだけだよ」
「うるせーな。見つかんなきゃいいだろ」
「ばれたら、私も買うの許可したって連帯責任になるでしょ」
「知るかよ」
実際こうして話してもやはり気が合わないと思う。
ただ波長は合うような気もする。
閉ざされた空間の中で好きなものを置きたくなる気持ちはよく分かる。
怒られようが、何か言われようが、自分の欲望のまま動いている松田が少し羨ましかった。
どうしても自分は父と比較して、守りに入ってしまう。
だから、そんな彼の前なら許されると思った。
「じゃあ、私にも付き合ってよ」
「はあ？」
買い物を終えた彼の腕を掴み、ずかずかと目的地に足を進める。
背後で何か文句を言っているような気がしたが、それも無視してただただ足を進める。
彼は着いた先を見て、げっと声を上げた。
「…俺、入りにくいんだけど」
「いいでしょ。さっき付き合ってあげたんだから」
そう強引に押し切り、服屋に入る。
控えめにレースがあしらわれ、上品な服を久しぶりに見て胸が高鳴る。
(かっわいい〜…)
最近は運動着と何の面白みのないシンプルなシャツやズボンばかりを目にしていて、目の前のものが全て輝いて見える。
少し触れてまた違う商品へと移り、夢中になっていると、
「…なんか安心したわ。ただのいいこちゃんじゃねえって分かって」
松田はそう言い、たくさんのレースがあしられたシャツを突きつけてきた。
「どうせ買うならぶりぶりしたやつ買えば？」
この悪戯は彼なりの優しさでないか、
「分かってないな、ここまで可愛くなり過ぎたら他の合わせにくいの」
「へえへえ。すいませんでしたね」
そう感じて、少しだけ嬉しくなった。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
