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並んで教官室に入り外出届に記入した後、門の前に立つ。
「今日、何買う予定」
「松田と同じようにウェアと…後は運動靴かな。
せっかく給料出たし」
「お前、見た目によらず計画性ねえな」
「いいでしょ。自分のお金だし」
そう言って女は唇を尖らせた。
近くの商業施設までは少し距離がある。
二人並んで歩き、電車で隣り合って座って向かう。
(別に嫌じゃねえけど、特に話すこともないな)
そうして目的地に着いた瞬間、
「さ、まずどこ行く」
そう尋ねると、
「…煙草、かな」
Aは少し恥ずかしそうにそう言った。
「…気が合うな。俺もだ」
学生の時萩原は言っていた。
Aに憧れていると。
確かに彼の言う通り、松田もAに対して感心する部分は多くあった。
ただ、こうして不思議と付き合いが多くなる中で気が付いた。
Aはいたって平凡な人間で、優等生に見えるその顔も実はそうではないと。
ふうと煙で吐く彼女の顔は少しだけ柔らかい。
(ほんとは俺と同じであまり出来がいい方じゃないのかもしれねえ。
それを見せないためにしてんだろうな)
Aの生い立ちは全く知らない。
しかし、彼女が憧れ入った世界は彼女にとって生きにくい場所のようだ。
松田が上司達が敵に見えるように、Aも同じかもしれない。
そう思うと一気に親近感が湧いた。
同時に興味も沸いた。
「今日、松田全然喋らないじゃん。
教官に言われて気ぃ遣わせたよね。
悪い」
不意にぶっきらぼうに彼女は言った。
否、これが素なのかもしれない。
「別に。俺も買いたいもんあったし」
「研二が今日当番だったからね、ほんとはそっちと一緒に行きたかったでしょ」
普段の松田なら、すぐにそうだと言っていた。
だがその言葉は口から出てこなかった。
とはいって代わりに出てくる言葉もなく、慌てて煙草を口に咥える。
「…まあ、どう思ってるかしらないけど、
私は嬉しかったよ。
関わりがあんまりなかったのに、こうして気分転換に誘い出してくれて」
そう言って、俯く松田を見て目を細めた。
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作者名：Nattu | 作成日時：2024年2月20日 1時
