突きつけられた真実 ページ8
それぞれ入念にストレッチをして、二人でしっかりと準備運動を終えて。
「よし、じゃあ行くぞ」
「うん、いいよ」
最後にお互い確認を取り合ってから、俺達は横に並ぶと走り出す構えを作る。
今からするのは俺達の日課。
遠い未来で「奴ら」と渡り合う為の、大事で大切な特訓だ。
****
全ての始まりは、俺がこっちにきてまだ五歳の頃。
寝る直前に聞こえてきた、両親の会話がきっかけだった。
その日は丁度父が仕事から帰ってきた日で、普段なら土産話に花を咲かせている筈なのだが。
「ーーーらしい....」
「っ....またーーなのね.....」
二人の話し方や声の暗さから、俺は何か重い空気を感じて。
(なんだ....?)
思わず閉じていた襖まで近寄ると、息を殺して二人の会話に耳を済ませる。
近くにはハルが寝ている為、ここは慎重に行動するべきだろう。
もちろん盗み聞きなんて悪いとは思ったが、今聞いておかないといつか絶対に後悔するような気がしたのだ。
(ごめん....)
内心で謝りつつ、静かに聞き耳を立てる事数秒。
次第に襖の奥から、二人の真剣な話し声が聞こえてくる。
話の内容からして、どうやら二人はここから少し離れた村の話をしているらしい。
ーーーだが次の瞬間。
(っ....うそ、だろ......)
聞こえてきたその言葉に、俺は目を見開いて戦慄した。
一瞬で動悸が早くなり、短くなる呼吸を聞かれぬよう咄嗟に手で抑え込む。
信じたくはないが、俺の聞き間違いじゃなければ今確かに言っていた筈だ。
ーーー『隣の村で、鬼にやられた家族がいる』と。
(っ、落ち着け、落ち着け....!!)
バクバクと跳ね上がる鼓動を必死に抑え込み、そう自分に言い聞かせるので精一杯で。
だがそうすればそうするほど、俺の中の嫌な予感はどんどんと膨れ上がり、不安の塊として重くのしかかってくる。
.....怖いんだ、この世界の真実を知るのが。
知ってしまったが最後、俺は間違いなくこの先の未来に絶望してしまうだろう。
(違ってくれ....!)
今の幼い俺には祈る術しかない。
だが神はどうにも残酷で、聞いている内に様々な単語が俺の耳に入ってくる。
そのどれもが心当たりのある、「こっちに来る前の世界」で聞いた言葉達だ。
聞き間違いなんかで済むレベルじゃない。
人を喰う「鬼」と、その鬼を斬る「剣士」。
そんな過酷なこの世界を、俺はあまりにも知りすぎていて。
「.....っ」
俺は齢五歳にして、ここが「鬼滅の刃」の世界である事を知ったのだった。
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みかん - もう公開はしないのでしょうか…凄く見たい…また公開にするような機会があることを願ってます!非公開にした理由が深いのなら作者様はこのコメント無視して頑張ってください!! (2022年1月9日 12時) (レス) id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 素晴らしいの一言に尽きます...素敵な作品で楽しく読ませていただきました。最新頑張ってください。陰ながら応援してます...(´∀`) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 000b312b5b (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - まだ(# ゚Д゚) (2020年3月10日 17時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 続きまだ? (2020年2月29日 20時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
佐藤悠真(プロフ) - 微笑ましいに尽きますね。いつもホワホワしながら読まさせていただいております。更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年2月18日 0時) (レス) id: 44efc3fddb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Syu | 作成日時:2020年1月16日 21時