【鬼滅の刃】多分神様に試されてるのでこの際抗う事にした【男主】

尊敬と仕返し ページ22

｢それにしても、本当に美味しいなこれ｣

｢あぁそう...｣

初めて食べたとご満悦な炭治郎さんに対し、心労からげっそりして答える俺。

別に女の子と笑顔で｢な！｣とか言い合ってるの見て可愛いなお前らとか、そんなん一切思ってないから。
超可愛いけど。

｢皆にも食べさせたら喜ぶだろうなぁ｣

その後呟くようにして聞こえてきた単語に、俺は家族や兄弟達の事だろうかと推測を立てる。

｢皆って？｣

敢えて知らないフリをして尋ねれば、炭治郎は笑顔で答えてくれた。

｢俺の家族の事だよ。あそこの山に家があるんだ｣

遠くの山を指さし、家の位置を教えてくれる炭治郎。
相槌を打つと、家族の事を話してくれて。

｢大変だけど毎日楽しいぞ｣

｢そっか｣

聞いてるだけで、家族を大切にしてるのがよく分かる。

八人家族の六人兄妹なんて、長男はさぞ大変だろうに。
愚痴や不満を一切吐かず、ひたすら幸せそうな顔で教えてくれて。

さっき菓子を断ったのも、家族を気遣った上での判断なんだろう。

(凄いな...)

そんな炭治郎の優しさと思いやりに、俺はただただ感心する。

家族を想って、自分を後回しにして。
養う為にも働こうなんて、そう簡単に出来る事じゃない。

ましてやまだ八歳の子供だ。
相当な苦労をしてきたんだろう。

｢炭治郎が長男で皆幸せだろうな｣

考えていたら、すっと言葉が口から出ていた。

何を知ってんだって思われるだろうけど、聞いてるだけで何となく分かる。

だって初対面の俺が思える位、家族が大好きなのが伝わってくるから。

｢お前が家族を思うように、向こうもお前が居てくれてよかったって。きっと思ってるよ｣

｢！ そう、かな｣

｢あぁ｣

確信を持って言うと、炭治郎は少し顔を赤くして、それから嬉しそうにはにかんだ。

そんな彼に、俺は｢けど、｣と言葉を付け足す。

｢あんま無茶して倒れんなよ｣

お前が元気な事が一番大事なんだからさ。
小さく呟くと、工具箱に手を伸ばす俺。

｢え...ちょっ！｣

そして聞き返されるよりも早く、俺は炭治郎の口めがけ菓子を強引に押し込んだ。

次いで頭を乱暴に撫でれば、慌てて騒ぎだす炭治郎。

手を離すと、何事かと顔を上げて俺を見る。

｢な、なっ...！？｣

そして驚く彼に、俺はしてやったりとばかりに口角を上げて、

｢俺を避けようとした罰だ｣

引っかかったなと煽るように笑えば、隣は固まる事数秒。

｢っ！！｣

またもや顔を赤くさせた炭治郎に、俺は全力で叱られたのだった。

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