ホークスの後輩 (ページ1)

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プロローグページ1

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　無機質な病室の中。
　重苦しい医療器具に囲まれ、口元には呼吸器をつけられた男──ホークスは枯れた喉をふりしぼるように、言った。

「俺は君は憧れるようなヒーローじゃない」

　それは、彼の口から一番聞きたくない言葉だった。
　呆然とベットの前に立ちつくすAは、やるせない無力さに唇をかんだ。
　なんでこの人はいつも「こう」なんだろう。
　無力さの次に、今度は怒りが這い出てくる。
　こぶしに力が入る。

　腹の底から自分のものとは思えないほど、低い声が這い出てきた。

「…………ざけるな」

　ホークスが顔を上げると、Aの目元には今にも溢れ出さんばかりの涙が溜まっていた。

「ふざけるな！
自分のあこがれのヒーローを侮辱するな！！！」

　いつもの彼女とは別人のような剣幕に、ホークスは驚いて目を丸めた。

　今だけはいつもの余裕そうな表情も鳴りを潜めて、本心が耳を傾けている。

「公安は確かに表のヒーローたちのように"綺麗な正義"を掲げることはできません。でも、自分達が…………あなたが泥をかぶってくれたお陰で救われた命があります！必ず誰かのためになっています！」

「それを、ホークス。あなたが教えてくれたじゃありませんか！」

　あぁ、なぜだろうか。
　Aは目の周りが熱くてたまらない。
　悔しくて、苦しくて、言葉とともに涙が溢れ出してきた。

「泣いてます。
あなたが泥を被ってくれたお陰で、救われた人が」

「A…………」

「ヒーローも、人です」

　Aは、恥ずかしげもなく、目元を隠すこともなく、見せつけるように泣いた。
　ヒーローで、やさしいこの人は困るだろう。
　それでいい。困ればいい。
　思い知ればいいんだ。
　そう思った。

「次は自分の番です。
今度は自分が、ホークスを支えます」

「だから ──── 頼ってください」

「もう一人で戦わないでください」

　もうこの人を一人で戦わせない。
　Aは無機質な病室の中で、そう誓った。