Graduate(短編) (ページ10)

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『おはよお、Aちゃん。』

「おはようございます、藤井先輩。」

あれから藤井先輩は本当に電車通学に変えた。

朝は必ず家まで迎えに来てくれて、

帰りは必ず家まで送ってくれる。

もちろん、学校でも普通に会話するし、登下校一緒だから色々言われた事もある。

だから正直嫌だったりする、この不思議な関係を。

付き合っている恋人なら当たり前なんだろうけど、

私たちは弟の友達と友達の姉、と言う関係。

それ以上でもそれ以下でもない。

今日も、ほら、

〈なんであんたみたいなのが流星くんと一緒にいるの！？
小瀧くんのお姉さんだからって色目使わないで！〉

と言われる日々が続いていて、正直嫌だ。

特に今日この人は藤井先輩と同じクラスの人。

毎日のように私に言ってくる。

〈ねえ、見なさいよ。今日はこれ持ってきたから。〉

そう言って見せてきたのは金属バッド。

〈お前をもう流星くんに会わせられないような顔にしてやるよ！〉

うわー、こんなの最低。って思っていた時に、

『何しとるん、Aちゃん。』

「…藤井先輩。」

『下駄箱で待ってたのに全然来おへんから…。
…おい、お前Aちゃんに何とるん。』

〈だって流星くんの気を引こうとしてるんだもん！〉

『Aちゃんが？
まぁ、気を引こうとしとるわな。
だって俺の彼女やし。』

…へ？

『帰るで、A。』

「あ、ちょっと、藤井先輩…！」

「あのー、もう手…。」

『あぁ、ごめんなぁ。』

「なんで彼女なんて嘘吐いたんですか？」

『え、Aちゃんが好きやから？』

「はい？」

「先輩私の事好きなんですか？」

『おん、好きやで。』

『やなかったらわざわざ電車乗らんし。』

「けど、私そーゆーの考えてなかったし…」

『ええよ、今からAちゃんの事落とすから。』

もうこの不思議な関係を卒業するのは、

この時から分かっていたのかもしれない。