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『…………てことだったのに、まさかの転校することになりました』
「急だね」
『急だよ』
「……まじ?」
『大まじ。親の転勤。よくある理由っしょ』
「いつ?」
『夏休み中』
「場所は?」
『香港』
「は?遠すぎだろ」
知り合ってこのかた、初めて見たよその表情。
珍しく顔色を変えた国見に、この人ちゃんと驚いたりするんだなァ、なんて失礼なことを考える。
『だからもうすぐ国見ともお別れだ』
「…………」
『……寂しい?』
「……まぁ少しは」
『少しかよ』
私は死ぬほど寂しいよ。
飄々と振舞ってるけど、これでも耐えてるんだよ。
なんてことはまだ言わない。
『でさ、私決めた』
「なにが?」
『転校までの間に、国見をおとす!』
「はァ?」
『だから早く私のこと好きになってね』
「ちょ、なにそれ。意味わかんないんだけど」
わかんないよね、そりゃそうだ。
自分でもめちゃくちゃなこと言ってると思ってる。
けど、このまま国見と離れ離れになるのは嫌だ。せめて私のことを好きになってほしい。
どうせ引っ越すのに余計に辛くなるだけだ、なんて普通は思うとこだけど。
なんだか私は逆に燃えてきてしまった。
『てことだから、よろしく』
「は、何がよろしくだよ」
『国見ちゃんをおとせ!大作戦〜』
「もう明日引っ越しなよ」
『照れ隠し?可愛いね』
「うざ……」
『あ、その顔好き。やってらんねー、って顔』
心底嫌そうな顔の国見と、想いが通じ合える日は果たして来るのか。
"夏休みまで残り2ヶ月"
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年7月6日 10時