necessary【九井一】【三途春千夜】

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「ひでぇ顔」



ばっちり腫れた瞼に、頬には涙の跡。
目を擦ったから瞳まで充血して、こんな姿人に見せられたもんじゃない。



「ぶっさいくだな」



そんな私を見てこの人は、笑った。



「これで目冷やせば？」



気遣ってくれたのも、この人だった。



「なんとか言えよ」



かがみこんで、むぎゅっと私の頬を摘んでは目線を合わせてくる。

やだな、そんな近距離で見ないでよ。
また不細工だって言われちゃうよ。



『……いたい』


「第一声がそれか」



ふっ、と笑う三途さんの雰囲気は、ヤク中の割には柔らかくて。



『タオル、ありがとう』



キンキンに冷やされたタオルで目を覆えば、あまりの冷たさに背筋が伸びた。



しばらくそうして大人しくしている間、三途さんはずっと私の隣にいて。

人が泣いてるのに、堂々と私の肩に全体重を預けてスマホをいじってる。



あの後すぐにココくんの部屋を出て、自室に戻ろうと廊下を歩いていたら、三途春千夜に遭遇した。

正直、見られたら一番厄介な人。

けど三途さんは本当に意外にも優しくて、こうして一緒にいてくれる。

彼にも人の心があったんだなぁ。



「おい」


『はい？』


「今失礼なこと考えてるだろ」


『……ヤク中さんも案外優しいとこあるんだなって』


「襲われてぇのか」



とか言って、この人は私に本気で酷いことはしないよね。



『三途さん、ありがとう』


「……お前に貸しひとつな」


『ん……いいよ。私にできることならなんでも』


「……お前な、そう言うこと言うんじゃねえよ」



俺じゃなかったら襲われてるぞ、
なんて。

三途さんは、この世で一番彼に似つかわしくないようなセリフを呟いた。






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