necessary【九井一】【三途春千夜】

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「……悪い、俺がどうにかしてた」



ココくんは我に返ったようにぱっと私から離れて、顔を背ける。



「もう部屋に戻れ。…………あと、これからは俺と関わんな」


「三途がお前のこと可愛がってるみてぇだし、何かあったら俺じゃなくあいつに言え」





なんで、そんなこと言うの。

本気なの……？

私、別に三途さんのものじゃないよ。

もう関わるなって、どうしてそんな悲しいこと言うの。ココくんはもう、顔も見たくないほど私のことが嫌になったのかな。



私たち、どこかでおかしくなった。

喧嘩してたわけじゃないのに、少しのすれ違いが大きな溝を生んだ。

多分、前からお互いの思ってることがばらばらだった。



私たちはもっと正直にいればよかったんだね。



「じゃあな、A」



部屋を出ていくココくんの後ろ姿を目で追う。

追いかけて、その背中に飛びついて。
私が好きなのはやっぱりココくんだけなのって言えたらいいのに。

もう一度最初から築きたいと伝えられたらどんなにいいだろう。

なのに、今はそれを言っちゃいけない気がして。
ここで私の好きを伝えても、説得力が欠けている気がして。

どうしても今その言葉を口にすることが憚られた。





バタンと閉まるドアが私たちの本当の終わりを告げる。

案外、あっけないもんだな。

煙草で煙ったい、一人の部屋に静寂が戻ってきた。



『う……っ、あああ、っ』



泣いたって解決しないのに、馬鹿みたいに涙は溢れる。

私がココくんを大好きだった証拠。

放り出されたベッドで、身体を起こすこともせずに、只管に泣いた。

一緒に眠った日々、こっそり髪を触ったりキスして怒られた。





全部全部、もう昔の話だ。






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