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人間って、驚く程に切り替えが早い生き物だ。
否、私だけなのかも。
あれからココくんとは必要以上に接触していない。
ココくんの部屋に置いていた私物は、彼がいないうちにこっそり撤去した。
まぁ、元から私物は少なかったんだけど。
そうして今は一人の部屋を用意してもらってる。
勉強するときも、少し仕事を手伝わせてもらうときも、ほぼこの部屋。
無機質な空間に私だけがぽつんといる光景は、傍から見れば妙だけど、私は何ともない。
「おいコラA、俺んとこからクスリ持ち出しただろ」
『ちょっと、ノックしてくださいヤク中さん』
ドアをばーんと開け放ってやってきたのは例の男。
何度言ってもノックしないのほんと困る。
学習能力ゼロですか?
そう言いたくなるのをぐっと我慢した。
「返せよクソアマぁ?」
『完全に目がラリってて怖いんですけど』
「ヤク切れなんだよ、早く出せ」
『駄目です。春千夜さん最近キメすぎ、やるなら分量守って』
「あー、うっせぇよくそババア」
うっせえよクソジジイ。
お前のが歳上だろクソジジイ。
大人気なくソファで足をばたつかせる男にチッと舌打ちすると、途端に大人しくなった。
「……怒ってんのか」
『……』
「A」
『仕事の邪魔だから出てって』
別にこんなことで怒るほど子供じゃないけど、単純に今忙しいから出てってほしくてそう言った。
「……んだよ、俺の事嫌いになったわけ」
何言ってんのこのおじさん。
元より嫌いも何もないんだけど。
そんな、好きだったみたいな言い方。
『嫌いにはなってないけど今仕事中なの見てわかりますよね。だからほっといてって意味』
はぁとため息をつき呆れ顔で言うと、彼は途端に表情を明るくさせて後ろから抱きついてきた。
『うわっ、さ、三途さん』
「……名字呼びやめろっつってんだろ」
『ちょ、わかりましたから……』
「俺はAが好きなのになぁ?腹立つわー……」
そう言い残して彼は部屋を後にした。
もう来なくていいです、って言いそうになったけどそこは堪える。
最近、いつもあんな調子で困ってる。
コロコロ態度が変わるのもクスリのせい。
好きとか言ってくるのもどうせクスリのせい。あんなの本気にするわけないじゃん。
そんなことより私は今自分のことで精一杯。
もう誰かを想ったりするのは当分遠慮。
あんなに好きだったココくんのことも、今はその感情がわからなくなった。
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蜜柑(プロフ) - 夢見心音さん» 夢見心音さん、コメントありがとうございます✨もっと素敵なココくん・春千夜を書けるよう頑張ります✨ (2022年2月23日 10時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
夢見心音(プロフ) - ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙好きです (2022年2月23日 2時) (レス) @page34 id: 6c0a89f163 (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 決して器用ではないけれど不器用で一途な一くんが大好きです💛💛💛 (2021年11月5日 16時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - ちえさん» ちえさんまたコメントありがとうございます!決して器用じゃないけど心配性で一途で神経質なココくんが好きです✨ (2021年11月2日 23時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - そんなココちゃんの不器用部分も含めて全部大好き君のことが好きなんだ (2021年11月2日 18時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年9月17日 18時