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結局、一緒に帰ってしまっているこの状況。
私って意外と意思が弱いのかな。
あの後及川にめちゃくちゃしつこく懇願されるもんだから、やむを得ず了承してしまった。
どうせ一緒に帰るなら練習を見にこないかとも誘われたけど、面倒だし断った。
及川が部活終わるまで私は図書館で勉強。
だって、あんな女子がワーキャーしてる騒がしい体育館になんていたくない。耳が死ぬ。
それに厄介事に巻き込まれたりしたら冗談じゃないから。
「Aちゃんてさぁ、」
いつになく機嫌が良さそうな及川が此方を見る。
「ほんとは俺のこと結構好きだったりする?」
『………………………………あ?』
「ヒッ!」
何を言うのかと思えば、とんでもない爆弾を落としてきて、私の表情は自然と強ばる。
はぁ?何がどうしてそうなるのよ。
私の態度、アンタを好きなように見えますか?
『それ、次言ったら、』
「も、もう言わない」
ギロリと睨めつけると、及川はわざとらしく震え上がる。そういうオーバーな反応がウザイんだけど。
「でもさ…………。今日だってこうして一緒に帰ってくれてるじゃん。帰宅部なのに俺が練習終わるまで待っててくれてさ」
『……及川って幸せな奴』
「え?」
『馬鹿じゃないの?及川が無理やり誘うから帰ってんでしょ。散々断ってんのにめげないから。だからこれは及川のせい。断じて私の意思じゃない』
「だとしてもさ。何だかんだ了承してくれるあたり、やっぱりAちゃんは優しいね」
目を細めてふわりと微笑む及川に、私のイライラはどうしてか緩和されていく。
______優しいのは及川でしょ?
どれ程私に雑に扱われても、全然めげないし寧ろこんなに綺麗な顔で笑う。
目の前のことしか見えてない。
『ふふ、っ、なんか及川って、めっちゃ単純!!』
私はなんだか笑いが堪えられなくなって、ゲラゲラ笑ってしまった。
やっぱりこの人変わってる。
こいつの態度はウザいけど、そういうところが人を惹きつけるのかな……。
「……………初めて見た」
『ん?なにが』
「Aちゃんが俺といて笑ってるとこ」
『え、ああそうだっけ?』
「……………っ、可愛い」
及川は急に照れてもじもじしだす。
そんな彼を初めて見て、私はいつもの調子で悪態をつくことができなくなってしまった。
調子狂うってこういうことかもしれない。
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蜜柑(プロフ) - 卵おにぎりさん» ありがとうございます!最近更新できてなかったので頑張ります…! (2021年8月3日 14時) (レス) id: 6c0400a92a (このIDを非表示/違反報告)
卵おにぎり - とても好き! (2021年8月3日 11時) (レス) id: 9fc3fd6c87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜜柑 | 作成日時:2021年5月30日 19時