第３夜 出会い ページ4
僕はチーシャンに着くと、真っ先に第七迷宮＜アモン＞へ向かった。
「あ？何だお前のルフ」
迷宮の入り口まで来たところで、“頭上から”声が聞こえた。
いや、僕の耳がおかしいんだ。僕は何も聞こえてない。頭の上から声が聞こえるなどあるはずがない。
「おい、シカトかよ」
……はっきりと聞こえた。先ほどと同じ声が、僕の後ろから。
え？幽霊？この世界にいるの？
僕は壊れた人形のように、ギシギシと顔だけを後ろに向ける。
そして僕が見たのは、真っ黒な長い髪を三つ編みにした赤い目の青年だった。
手には、赤い宝石のついた杖を持っている。
服の露出度が少し……いや、かなり高い気がするが……。
「君は誰？」
「そこは自分から名乗るのが礼儀じゃねえか？俺はジュダルだ」
なんだかんだと言いながら名乗るあたり、根は素直な青年らしい。
「それは失礼したね。僕はA。しがない旅人だよ」
僕が名乗ると、青年、ジュダルは僕の足の先から頭の上を値踏みするようにジーっと見る。
「お前、この迷宮に行こうとしたのか？」
ジュダルは目の前の迷宮を指差ししながら、目をキラキラさせて聞いてくる。
何故そんな期待のこもった目で僕を見るんだろうか？
「うん、そうだよ」
そう答えると、ジュダルは玩具でも見つけた子供のように、目を細めて笑う。
その視線は、まるで僕に問いかけているかのように真っ直ぐだ。
「……力がいるんだよ」
僕はそれだけ言い、誤魔化すように笑った。
そんな僕を見たジュダルは、驚いたように僅かに目を見開いた。
「また会えたら良いな、ジュダル」
そう言いながら、ジュダルに小さく手を振りながら迷宮へ足を進める。
大丈夫だ、怖くない。
もうこれ以上、大切な人たちが苦しむ姿を見たくないんだ。
そのために、力がいるんだ。
僕は迷宮の扉に触れようと、手を近づける。
だがその手は、誰かによって掴まれた。
「……ジュダル？」
僕の手を掴んだのは、ジュダルだった。
ジュダルは悪戯が成功した子供のように、ニッと白い歯を見せて笑う。
「俺も行ってやる。俺はマギだからな」
そう自慢げに言うジュダルに僕は首を傾げる。
マギとは、何だろうか？
「ジュダル、マギって言うのは何だい？」
僕が聞くと、ジュダルは驚愕の表情を浮かべ、手に持っていた杖を地面に落とした。
「お前知らねえのか！？」
それから僕は、ジュダルからマギの話を聞かされることになった。
マギとは王を選び導く、創世の魔法使いだという。
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作者名：リムス | 作成日時：2018年3月22日 18時
