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44.指輪の文字 ページ47

僕が握っていた手が、力なく地面に落ちる。リュヌは、幸せそうに目を閉じている。

僕の邪竜としての力を消し去って、“器”まで外に出しておいて、何事もなかったかのように安らかな表情で。

今にも寝息が聞こえて来そうな、いつもの変わらない表情で。

「リュヌ?起きろ」

僕は、2度と目覚めるはずのない彼女の頬を軽く叩く。
分かっている。彼女が死んだことくらい。

虫けらの次は、僕のために身を削いだのか?
そんなことまでして、君は僕に何をしてほしかったんだ?

分からない。彼女の考えが。

「ギムレー、ここはもう危ない。早く避難しよう」

そう僕に言ったのは、僕がとうの昔に取り込んだ“器”だ。周りには既に誰もおらず、いるのはその“器”だけ。

「虫けらが僕に構うな。君は僕を殺したいんだろう?クロムを、仲間を殺した僕を」

僕が言えば、“器”は首を横に降る。

「確かに、僕は君を許せない。それ以上に君を止められなかった僕も許せない。でも、僕は外に出るとき、彼女から君のことを頼まれたんだよ」

“器”はそう言いながら、僕を真っ直ぐに見る。

「“1人になったギムレーの隣にいてあげてください。彼は、傲慢で非道だけど、誰よりも寂しがり屋で優しい人だから”ってね」

そう言うと、“器”は僕の両肩を掴み立たせる。

「今は避難するんだ。君のために命を落とした彼女のためにも」

この言葉に、僕は拳を強く握りしめた。
屈辱だ。たかが虫けらの言うことに従うなど。

僕はリュヌの遺体を抱えて、“器”の後を追う。

僕らが避難したのは、クロムたちとは違う山の上だった。“器”が言うに、必要以上に関わるべきではないらしい。

「……殺せ」

僕はリュヌの遺体を地面に寝かせて言う。

「殺さないよ。少なくとも、君の知るリュヌはそんなことを望むような子じゃない」

「虫けらが偉そうに……!」

なら君は、僕にどうしてほしかったんだ?
邪竜でもない僕は、何をすれば良かったんだ?

答えを求めるように、僕はリュヌの遺体の側にしゃがみ込み、自分の手袋を外す。

中指にはめた、リュヌからもらった指輪を眺めていると、石の側面に文字が書かれているのに気が付いた。ポケットに入れていた、リュヌがしていた方の指輪にも、文字が書かれている。

まさかと思い、2つの指輪についた石の部分を重ねて見ると、3つの文字が浮かび上がる。

【生きて】

たったそれだけの言葉。
それだけのはずなのに、僕は生まれて初めて、声を上げて泣いた。

最終話 邪竜の半身→←43.贄



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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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