４３.贄 ページ46
私以外は、誰も口を開かずただ呆然とこちらを見ていた。
ギムレー自体が今は戦意喪失しているため、屍兵も襲いかかってはこない。
今の私にとっては、とても有り難い。
この魔法は、集中力が必要なのだ。１歩間違えれば、魔法をかけられた人自身の存在を消しかねない。それほど危険なものだ。
未来のルフレさんをギムレーの中から引き出せたのも、この魔法のおかげだ。ギムレーに取り込まれる前の状態まで時間を巻き戻す。何かと便利な魔法だ。
だが、今回の相手はギムレーだ。
仮にも彼は神竜。そんな相手にただの魔法など通用しない。
だが、魂を贄とした魔法ならば話は別だ。
使用者は魔法発動後に命を落とすがその分、強力な魔法になる。
どれほど時間が経ったのかは分からないが、魔法は成功した。現に、ギムレーの本体である巨大な竜が、少しずつ形を崩し始めている。
「良かった……」
私はそう言って笑うと、膝から崩れ落ちた。
「リュヌ！」
そんな私の側に駆け寄って来てくれたのは、ギムレーだ。
いつの間にか、私の周りには仲間が集まっていた。ギムレー様への生け贄として生まれた私はこんなにもたくさんの人たちと関わっていたのだなと、今更ながら嬉しく思う。
「早く逃げないと、このバカでかい竜と一緒に落ちるよぉ」
私が言えば、全員が暗い顔になる。
私の顔色は、それほど悪いのか。
まぁ、もう少しであの世からお迎えが来るからねぇ。
「……ギムレー、ルフレさんの言うことちゃんと聞くんだよ？」
私はそう言い、私を見て肩を震わせるギムレーの頬に触れる。
「キミは、立派な人間だよ」
私たちがまだ一緒にペレジアに居た頃、キミは寂しそうに独り言を言っていたね。
『僕が人間だったなら、君たちと共にいられる存在だったのかな？』
キミが人間じゃなくても、私は一緒に居られると思うよ。だってキミは……。
「こんなにも……優しくて、温かい」
私は右手の手袋を外し、指輪をギムレーに差し出す。
「貰ってくれるかな？２個も……いらないとは思う……けど」
限界が近づいて来たのだろう、私が指輪を差し出した手は、震えていた。その手を、ギムレーは指輪ごと両手で包み込むように握った。
「ありがとう……」
安心したからか、私は強い眠気に襲われた。
その眠気に逆らうほどの気力は、今の私にはない。私はそのまま、ゆっくりと瞼を閉じた。
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
