38.友の心 ページ41
「リュヌ!」
私に突き飛ばされたルフレさんは、矢で傷を負った私を庇うように前に出る。
私はただルフレさんの背中を見て蹲っていた。
肩を見れば、白いローブは真っ赤になり、ギムレーに罪悪感が溢れた。
せっかくもらったローブを台無しにして、ごめんね。心の中でギムレーに謝罪しながら、私は意識を手放した。
目を覚ますと、私はベッドで寝ていた。
起き上がろうとすると、肩に痛みが走る。見ると、肩には包帯が巻かれ、その包帯には血が滲んでいる。
誰かが、天幕に入ってきた。
フードで目元を隠した、ルフレさんだった。
「気分はどうだい?リュヌ」
いや、違う。この声は、ルフレさんのものではない。フードの下から、血のように真っ赤な瞳がこちらを見る。
「ギムレー?どうしてここに?」
私が聞けば、ギムレーは呆れたようにため息をつく。
「君が師を庇って怪我をしたって聞いてね。それで君が死んだら、どうする気だった?」
いつもと同じ口調のはずなのに、ギムレーが苛立っているのが分かった。
伊達に2年も一緒に暮らしたわけではない。
「どうするも何も……師匠を見殺しにはできないでしょう?誰かを庇って死ねるなら、私にしては最高の死に方じゃない?」
私が言えば、ギムレーは歯ぎしりをする。彼が感情を表に出すなど、珍しい。
「君はいつもそうだ。我には自分が本当にやりたいことをやれと言いながら、君は虫けらどものために身を削る」
そう言いながら、ギムレーは拳を握りしめる。
「それで君が死んだ時に、置いていかれた僕のことを、君は考えたことがあるか?」
声を震わせてそう言うと、ギムレーは天幕から出て行ってしまう。
私は、馬鹿だった。自分が犠牲になってでも何かを守れれば、それが1番良いと思っていた。
だが、これが現状だ。
私は、たった1人の友人の心も守れていないじゃないか。キミのことを、考えているようで全く考えれていないじゃないか。
1人だけになった天幕で、私の頬を涙が伝う。
「待って、ギムレー!」
私はベッドから起き上がり、ギムレーを追う。
いきなり身体を動かしたために、傷口が痛んだが、今はそんなことを気にしていられない。
私は肩を抑えて、天幕を出る。
だが、そこには夜景が広がっているだけで、ギムレーの姿はどこにもなかった。
ごめん、ギムレー。ごめんね。
私はキミに……。
既に過ちを犯した私は、左の二の腕を強く握りしめた。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時