37.油断大敵 ページ40
「リズ!リズ!」
「リュヌちゃん!?どうしたの?」
天幕の中に息を切らしながら入ってきた私に、リズは驚いたように駆け寄ってきた。
「し……師匠が……何かよく分からないけど大変で……とにかく一緒に来て!」
混乱してしまい、自分でも何と言っているのか分からなかったが、リズは頷き、私たちはルフレさんのいる場所に向かった。
そこには深刻そうな表情でクロムさんと話すルフレさんの姿があった。
「ルフレさん、大丈夫!?」
リズは、今も顔が真っ青なルフレさんに駆け寄ると、杖【ライブ】を構える。
「あぁ、リズ。平気だよ」
笑顔を見せるルフレさんに、リズは安堵のため息をつき微笑んだ。
「そっか。リュヌちゃんからルフレさんが大変だって聞いたから、何かあったのかと思った」
「そうか……ごめん、心配かけて。リュヌもありがとう」
リズに申し訳なさそうに謝ると、次に私に笑いかけてくれた。
本当に何ともないんですか?と聞こうとしたそのときだ。慌てたように、フレデリクがこちらに走って来た。
「クロム様、敵襲です。屍兵がこの野営地を包囲しつつあります」
フレデリクの言葉にクロムは眉に皺を寄せる。
「……誰かに指示されて動いたみたいだね」
私は誰にも聞こえないようにそう呟き、ルフレさんたちの側を離れた。
屍兵を従わせることができるのは、ギムレーだけだったはず。キミの目的を、私は知らない。だから、私をここへ送った理由も、今回の襲撃の理由も知らない。
でも、信じてる。キミは私に、ここでやってもらいたいことがあるんでしょう?
なら私は、その答えを探すだけ。
懐から魔導書を取り出して、私は自分のテントに戻り出撃の準備をした。
外に出ると、そこには仲間全員にテキパキと指示を出すルフレさんがいた。
私はルフレさんの隣でサポートをするように言われ、敵が来ないかを見張る。
最後に実戦を経験したのは2年も前だが、訓練はずっと休まずやっていた。
だから、慢心していた。
どこからか矢がルフレさんに向かって飛んで来たのを、私は少し遅れて気が付いた。
今、魔法を放ったとしても間に合わない。
「師匠!」
私は魔導書を持ったまま、ルフレさんを突き飛ばした。飛んで来た矢は、私の魔導書を貫いた後、私の左肩に突き刺さる。
私は何とか地面を踏みしめ、矢を放った弓兵に魔法を放った。
「う……!」
肩から矢を伝い地面に血が滴り落ち、土を赤く染め上げた。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時