36.頭痛 ページ39
私が言うと、ルフレさんは少し呆れたように声を出して笑った。
「やっぱり、君は変わってるよ。でも、君だからギムレーも……」
その先は声が小さく聞き取れなかった。だが、先ほどまで冷え切っていた空間が、ほんの少し温かくなったように感じる。
「……キミは、未来の師匠なんですか?」
何となく、そう思った。
声はルフレさんなのに、私の知るルフレさんとは違う、生気の宿らない弱々しい声と、本来ルフレさんが知るはずのない、ギムレーの名。
だが、私の問いにルフレさんは答えない。
「君がギムレーのためを思うなら……」
ルフレさんが重々しくそう言った途端に、私は激しい頭痛に襲われた。
突然のことに、私は両手で頭を抑える。
この頭痛は、左の二の腕の呪いが原因だ。
これが初めてではないのだが、今回は今までとは比にならないほどの痛みだ。
もう……時間がないってことなのかな?
私は頭を抑えたまま、意識を手放した。そのときに、暗闇の中でルフレさんが悲しそうに顔を歪めたのが、ほんの一瞬だけ見えた気がした。
目を覚ますと、私は木の根にもたれかかったまま地面にしゃがみ込んでいた。
日はもう沈んでいて、周りは薄暗い。
『君がギムレーのためを思うなら……僕たちを殺してくれ』
ルフレさんが最後に私に言った言葉が、頭の中をグルグルと回る。
あれは、ただの夢だったのだろうか?
私は地面から起き上がり、伸びをする。
そのときに、天幕の方から誰かが出てきた。
「あれ?リュヌ。まだ起きてたのかい?」
その人物は、ルフレさんだった。
さっきまでここで寝ていましたのは言えない。
「はい。少し寝付けなくて……」
私が言えば、ルフレさんは苦笑を浮かべる。
ちょうどそのときに涼しい風が吹き、ルフレさんの白銀の髪を揺らす。
「僕も寝付けなくてね。あの最高司祭、僕と同じ顔だった。それで……」
そこまで言いかけて、ルフレさんは急に辺りを見回した。
「今……誰かの声がしなかったかい?」
ルフレさんの問いに、私は首を傾げる。
少なくとも、私には誰の声も聞こえなかった。
そのとき、ルフレさんは辛そうに顔を歪ませ、両手で頭を抑えた。顔色は真っ青で、正常ではないというのは分かった。
「師匠!大丈夫ですか!?」
「く……頭の中に、声が……」
尋常ではないルフレさんを置いて、私はリズたちを呼ぶためにテントの方へ向かう。
今のルフレさんを走らせるわけにはいかない。
そう思い、私は全力疾走する。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時