29.二年 ページ32
私とギムレーが一緒に生活をし出して、間も無く2年が経とうとしていた。
ギムレーの懸命な指導により、私の料理は相手を気絶させるものから、吐き気や頭痛を催すものへと変わった。
インバース曰く、猛毒が毒になっただけだがそれだけでも進歩らしい。
「おはよう、ギムレー」
朝に目を覚ました私は、キッチンの前で何かを煮込んでいるギムレーに声をかける。
「ああ、おはよう」
私に気付いたギムレーは、顔だけをこちらに向けてそう返す。
「煮込むの手伝おうか?」
「朝から毒を食べるのはごめんだね」
私が言えば、何とも清々しい笑顔を見せて言うギムレー。
ほんの2年で、キミは随分と変わったね。
最初は般若が見えるような恐ろしい笑顔を見せていたのに。
私は椅子にかけてある、白いフード付きのローブを羽織り、ギムレーが料理をするのを見ながらこれまでのことを振り返る。
ノノちゃんを生贄にしようとしたのもあり、最初はあまり良い印象を持たなかったギムレー信教団だが、話してみると、ギムレーと同じだったのだ。
ただ、眩しい平和な世界が辛いだけ。
だから私は、何度も彼らに話しかけた。
そのおかげか、今では教団の人で私を知らない人はいないとギムレーが言っていた。
私たち人間は、生まれたときから1人ぼっち。
死ぬときも、最終的には1人だけ。
他人の痛みを、理解できるわけじゃない。
でも、救えるものがあるのなら、私はそれに手を差し伸べたい。
それが偽善だと言われようが何だろうが、私は私がやりたいことをやる。
後悔をするのが、何よりも辛いから。
しばらくすると、部屋の扉が開いた。
扉から現れたのは、ファウダーとインバースだった。
「おはようございます、ギムレー様」
ファウダーはそう言うと、今も熱心に何かを煮込むギムレーにお辞儀をする。
「ファウダーさぁん、私もいますよぉ」
私はファウダとインバースの前に移動し、大きく両手を振る。
「……ギムレー様。どうかリュヌちゃんには料理に手出しをさせないようにしてください」
「うん」
遠くを見るような目で、インバースはギムレーに言う。
それを即で答えたギムレー。
「……今日、イーリス聖王と軍師殿がお見えになりますので、ギムレー様もお会いになってはどうでしょうか?」
私たちのやり取りを無視して、ファウダーはギムレーに言う。
「ああ、分かった」
ギムレーがそう言うと、ファウダーは部屋を出て行った。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時