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25.涙 ページ28

目が覚めると、私は高級そうなベッドで横たわっていた。

「ここは……?」

私は上半身を起こし、周りを見回す。

そこはシンプルな部屋で、ベッドや棚など、生活に必要最低限なものしかない。

だが、置かれているもの1つ1つは、私でも分かるくらいに高級なものばかりだ。

普段の私なら、急に知らない場所で寝ていたら悲鳴でも上げるのだろうが、何故か頭がボーッとする。

この部屋は、ギムレーの部屋だろうか?

ベッドからギムレーの匂いがしたので、たぶんそうだろう。

……これでは私が変態みたいだ。

あ、ギムレーとルフレさんは似ているけれど、匂いはほんの少し違う。

臭いとかそういう意味ではないけれど……。

それより、なぜ私はここで寝ていたのだろう?

「ギムレー様、お待ちください!まだ寝ていないと!」

「うるさい!我に命令するな!!」

扉の向こうから、複数の足音と声がした。

1つは、全く知らない人の声。
もう1つは、たぶん私の友人の声だろう。

たぶん、と言ったのは、ギムレーが声を荒げて怒鳴っていたからだ。

普段の彼は、上品とは言えないのだが……声を荒げるようはことはあまりしないからだ。

「人間の小娘を拾ってきたかと思えば、ギムレー様の部屋を使わせるなど……!」

「黙れ!お前には関係ないと言っただろ!!」

何やら荒れているようだ。

足音が段々と大きくなり、扉がバン!と、乱暴に開けられた。

そこにいたのは、目の下にクマをつくったギムレーと、知らないおじさん。

私と目が合うと、ギムレーは不機嫌そうな顔から、目をまん丸くさせる。

かと思えば、隣にいたおじさんを部屋から回し蹴りで部屋の外に蹴り飛ばし、扉をバタン!と閉じた。

いやいや、いくらなんでも蹴らなくても……。

「ギムレー様!開けてください!」

「うるさい!!」

ギムレーはそう言うとため息をつき、こちらに振り向いた。

その顔は、笑っていた。
だがその笑みは、鳥肌が立つほどに恐ろしい笑みだった。

「おはよう、リュヌ。よく眠れたかい?」

言葉だけなら、そんなに怖くはない。
だが、声はものすごく低い。

「えっと……怒ってる?」

私が聞けば、ギムレーはこちらに歩み寄り、私の前で止まる。

「……良かった」

ギムレーはポツリとそう呟き、微笑んだ。
先程とは違う、優しい笑みだった。

「君が、いなくなるんじゃないかって……」

ギムレーはそう言って俯いた。

隠れた顔の下から、涙が溢れ落ちていた。

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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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