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16.先の先へ ページ18

戦争が、終わりを告げる。

ペレジア王国国王、ギャンレルを討ったクロムとルフレさんは、平和の訪れを告げた。

けれどこの勝利に、喜ぶものは少ない。

多くのものを失ったことで得た勝利だから。

「リュム」

勝利が告げられた途端に声がし、振り返ると、そこにはボロボロになったルフレさんがいた。

「師匠……ご無事でなによりです」

「うん、君も無事で良かった」

ルフレさんはそう言い苦笑する。

「僕はこれからも、クロムたちとイーリス聖王国を支えていく。リュムは、これからどうするんだい?」

戦いは終わった。
もしも旅に出るとしたら、今しかない。

「……私は、師匠たちとイーリス聖王国に帰ります」

何となく、ルフレさんたちといれば、彼に会える気がするから。

「そっか。明日から忙しくなるぞ?」

「望むところです」

試すように言うルフレさんに、私は笑って答える。

クロム自警団で、私はルフレさんの、軍師の補佐役なのだ。

だから、ルフレさんの手伝いが私の仕事。

策を練るのも、書類を片付けるのも、ルフレさんだけでなく、私も一緒に行う。おかげで、自警団ではチビ軍師と呼ばれているのだ。

うん、チビは余計だと思う。

まぁそれはさておき、私はルフレさんたちの後に続いて、イーリス聖王国に向かう。

その後の数週間は、ずっと書類との戦いだ。

書いては見直してルフレさんに提出。また書いては見直してルフレさんに提出。

ただこれの繰り返しだ。

時々、ルフレさんが部屋までおやつを運んできてくれ、一緒に食べるときがある。

そのときの時間だけが、私にとっての癒しだ。

そして今日、ようやく仕事に余裕ができてきたのだ。

ルフレさんからは休憩の許可をもらい、私はクロムに設けてもらった自室でチェスをする。

外に出たいとは思わない。
城の外に出るのは、ルフレさんたちの仕事が片付いてからだと決めているから。

ギムレーと別れてからは、ルフレさんとヴィオールさんにチェスの相手をしてもらっている。

当初は全敗だったが、今では10戦中1勝はできるようになった。

……自慢できないのは分かってる。
だが、私にしては良い結果だと思っている。

自室にはもちろん私1人で、駒を置く音だけがする。そんな中、窓に何かが当たる音がした。

「……雨?」

窓から外を見ると、空は曇り、少しずつ雨が降り出していた。

やがて、だんだんと雨が窓を打つ音が大きくなっていく。

コンコン

窓の向こう。
誰かが窓を叩く音がした。

17.窓の向こう→←15.邪竜の憂鬱



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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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