１５.邪竜の憂鬱 ページ17
『ギムレー！良かった！実は聞いてほしいことが……』
何故そんなに、嬉しそうに笑うんだ？
我といるときは、そんなに嬉しそうに笑ったことなどなかったのに。
そして何故、そんなことで我が腹を立てる？
分からない。この“器”が原因か？
腹ただしいことこの上ないね。
「……」
リュムと別れて以来、彼女のことばかりが頭に浮かぶ。
胸に空洞でもあるかのように、寒い。
こんなことは、今までになかった。
彼女と別れた日の夜。気晴らしに、僕はファウダーたちを連れて適当な村を焼き払った。
絶望に泣き叫ぶ人々の悲鳴に、炎の熱さ。
それが、我にとっての快楽であったはずだ。我は破滅と絶望の竜だから。
『楽しいんじゃなくて、哀しいんでしょ？』
我がリュムと出会って間もない頃に、リュムが我に言った言葉。
『もう、いい歳なんだから……破滅と絶望なんて厨二病くさいこと言ってないで、チェスとかやって楽しもうよ』
『余計なお世話だ』
今思えば、なぜ我はあんな無礼な人間を生かしておいたのだろうか。
『チェックメイト』
『あぁ！！待って、そこだけは待って！お願い！もう１戦だけやらせて！』
『これで僕の２８連勝か。今まで君とチェスをやった回数は２８戦。つまり、僕の全勝だ』
『な……何で勝てないのぉ……』
彼女だけだった。
我を僕として見てくれたのは。
邪竜ではない、ただの“ルフレ”として。
「ほら、次は君の番だよ」
「……私の負けです。流石はギムレー様」
今、僕のチェスの相手をしているのは、ファウダーだ。
この“器”の父であり、我に忠実な駒の１人。
こいつは、我の復活には必要不可欠な存在だ。
それが運命だから。
だがこいつは、僕とのチェスで負けが見えるとすぐに降参をする。
ご機嫌取りで、わざと負けているとも見える。
『そろそろ降参をしたらどうだい？この状況だと、キミの勝算は０だよ』
『絶対に嫌だ！キミを負かすまで何度だって挑戦してやる！だから……！』
『チェックメイト』
『無慈悲だよぉぉ！！』
楽しかった。圧倒的な実力の差を見せても、何度も挑んでくる彼女が。
邪竜に媚びようともしない、彼女の目が。
「……出掛けてくる」
「どちらへ？」
「君には関係ない」
僕は椅子から立ち上がり、彼女がいるであろう場所に向かう。
僕は、人間が嫌いだ。
でも、君といるのは嫌いじゃない。
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
