33.落胆 ページ36
大きな広間に1人だけ取り残された私は、必死で頭をフル回転させて考える。
なぜギムレーが私をルフレさんたちに同行させようとしたのか。
『必ず迎えに行く』
広間を出て行く際に、ギムレーがそう私に耳打ちした。
「ギム……最高司祭殿の補佐官です。どうかよろしくお願いします」
とにかく何か喋ろうと思い、私はそう言ってから頭を下げる。
「僕はルフレ。軍師だよ」
「俺はクロムだ」
それに対して、律儀に返事をしてくれる。
フレデリクは疑わし気に私を見ているが……。
まぁ、それが普通だろう。
「補佐官殿のお名前を伺っても?」
フレデリクがそう言う。
「私は……」
リュヌです、と言おうとして固まる。
正体を明かしても大丈夫なのだろうか?
ギムレーは火傷で顔を隠していると嘘をついたのだから、正体は隠すべきだろうか?
こういうときは……。
「リュ……リュヌです」
潔く、正体を明かすとしよう。
そう思い、私はフードを外して、ルフレさんたちを見る。
「そうか。これからよろしく、リュヌ」
だが、ルフレさんたちは気付かずにそう言う。
少なからず、私はそれに落胆した。
確かに過ごした時間は短いが、何度か共に戦場を生き抜いた仲間だったのだ。
だから、覚えてくれていると思っていた。
「よ……よろしくお願いします」
私は必死で笑顔をつくり、ルフレさんたちの後に続く。
バレる心配がないと喜ぶべきか、覚えてすらもらえていないのことに悲しむべきか、よく分からない複雑な感覚になった。
だからだろう。
ルフレさんたちの肩が震えているのに、私は全く気付かなかった。
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ギムレーの行動と、ルフレたちの行動に困惑する夢主でした。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時