31.師と友人 ページ34
「え?あの……」
黙ったままのギムレーに、ルフレさんは再び声をかける。
「なるほど……。奥底に眠る血は残っているようだ」
「!?何を……」
ギムレーが言うと、ルフレさんは表情を険しくさせる。
気にはなっていたが、未だにギムレーの口から聞けていない。
『師匠とギムレーは、同じ存在なの?』
何度か聞いたことがあるが、それにギムレーが答えてくれたことはない。
代わりに、インバースが答えてくれた。
『似て非なるもの』
それは一体、どういう意味なのだろうか?
私自身、その辺りはあまり気にしてはいない。ギムレーはギムレーで、師匠は師匠だから。
「司祭殿。失礼ながら、なぜそのように顔を隠すのです?我が国の王子に顔を見せないとは、無礼ではありませんか?」
フレデリクが、ギムレーに言う。
あまりギムレーの顔は見ない方が良いと思う。
混乱するから。
「……」
ギムレーはしばらく考え込むと、私に背後に来るように手で合図をする。
私はギムレーの裾から手を離し、足音を立てないよう後ろにまわる。
普通の人がギムレーの後ろに回っても視界に入るだろうが、私は違う。身長差から、ギムレーの影にスッポリと隠れられるのだ。
……悲しい。
「……それは失礼。それほど見たいと言うのなら……」
ギムレーは私が動いたのを確認すると、フードを外す。
案の定、ルフレさんたちは驚愕の表情を浮かべて一瞬固まる。
「これで満足かな?」
その反応が面白かったのか、ギムレーは僅かに頬を緩める。
その変化に気付いたのは、私だけだろう。
「!!!」
「な……!」
「こ……これは……!!」
ルフレさんは声も出ず、クロムは声が出るも言葉が出てきていない。3人の中で最も落ち着きを保てるであろうフレデリクでさえも、まともな言葉が出てきていない。
当然と言えば当然だろうか……。
「同じ……顔……」
最初に言葉を発したのは、ルフレさんだった。
「僕はルフレ。偶然だね。そこの軍師殿と同じ名だ」
だがその言葉を聞き、今度は私が驚愕の表情を浮かべた。
え?キミの名前はルフレなの?
2年間ずっとギムレーって呼んでたよ?
そんな私の困惑など知らずに、話は進む。
「さて、これで司祭殿の挨拶もすんだ。我々も帰らせてもらうとしよう」
ファウダーはそう言うと、踵を返して広間の奥へも戻る。
だが私は、動けなかった。
2年ぶりの仲間と師との再会に何も言えずに去るのは、名残惜しい気がしたから。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時