あの、シュークリーム落としましたよ。【HQ】

ポテチは塩で決まりでしょ。 ページ7

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｢……そうだな。確かに、いつまでもズルズル
してんの、性にあわなそうだしな｣

｢はは、正解｣

2個目のシュークリームをあっという間に
食べ終わった松川が、公園の時計をチラリ。

｢……もう遅くなる。じゃ、私そろそろ帰る
から。じゃあね、松川｣

｢あ、待てよ！送ってくって｣

｢そんな、気の利いた事しなくていいよ。
家に帰るだけなんだから。それに、これ｣

未だに残る、膝の上に一先ず置いた何個かの
シュークリーム。

それを抱えて、松川の膝の上へ。

｢あとは家で食べなよ。暗い公園で1人で
シュークリームなんて悲しいこと、するもん
じゃないでしょ｣

じゃあね、なんて手を振って、リュックを
揺らしながら、公園を後にする。

私が座っていたブランコが音を立てて、
思わずそれに合わせて足を動かしてしまう。

キィ、キィ……。

連絡先も交換しなかったし、名前しか
聞いていない。

分かっているのは高校名と名前だけ。

我ながら、おかしな奴と関わった。

松川一静。さっきまで話してたのに、この名前
を口にすると、なんだか違和感が半端ない。

すっかり遅くなってしまった。

そもそも、部活もないのに日誌を書いたり、
引退した後の吹部をこっそり覗いたりしてた
からいけないのだ。

だから、あんな変な奴に会ったんだ。

あー、やばい。部活の話してたら部活したく
なっちゃったじゃんか、コノヤロー。

｢……あんなにシュークリームうまそうに
食べる人、初めて見たな｣

シュークリーム、ねえ。
明日もこの時間に行けば、会えるんだろうか。

あの、面白い奴に。

はは。なんか、面白くなってきたじゃんか。

ピンク頭を思い出して、どこかガーリーな
あいつにふと笑いを零す。

家まで全速力で走って、ただいまだけ言って、
自分の部屋のベッドへGO。

息を切らしていたのを直すように、深呼吸を
する。

部屋の本棚から少年漫画を取り出して、
読み進める。

制服がシワだらけになるなんて心配もせず、
ただ、スポーツ漫画を読んでいく。

嗚呼、青春。

基本、運動は出来ないから。

だから、中学から吹奏楽をやってきたけど。

部屋の本棚に少年漫画がズラズラ並んでる
時点で、普通の乙女チックなJKじゃあない。

こういうとこなんだろうな、なんて、クラス内
での自分の地位を思い浮かべて、ため息を1つ。

まあ、少年漫画が好きっていうのは、
隠してるから良いけど。

でも、それは。

本音を晒し出すのが怖いだけの、只の、
弱虫な自分に過ぎない。

お腰につけたシュークリーム、どうぞ私にくださいな。→←弱小は弱小なりに生きてんだ。

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