あの、シュークリーム落としましたよ。【HQ】

ハラハラする＝腹々する。 ページ5

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｢松川一静？なんか、意外｣

｢……何が？｣

｢いや、一静って感じでもないし。
松って感じでも、ないから。

どっちかっていうと……花？｣

松川の肩が揺れる。
花、っていう単語になんか、恨みでもあるんだ
ろうか。

花の恐怖症とか？

｢いやほら、なんか、頭ピンクだし｣

｢ピンクがかってるだけだって｣

｢……シュークリーム好きとか、女子っぽいし｣

｢女子っぽくて悪かったな｣

松川一静ねえ……。こいつに似合わない、変な
名前だ。親はどんな気持ちでこの名前を付けた
んだか。

｢……はは、こんなに名前と顔が一致しない人、
初めて見た。よろしくね、松川｣

思わず笑えてきてしまって、腹を抱える。
松川、一静。

こいつに合わない。でもきっと、こいつの
親がつけたんだから、なんか、あるんだろう。

意味が無きゃ、親はその子に対して名前を
付けて可愛がるなんてしないんだから。

｢……よろしくな、高津｣

気に入った。こいつ、結構面白い。
制服からして、青葉城西だろうか。

この間見た、常波のバレー部の試合で、
こんな感じの制服見かけたし。

まあ、バレーには詳しくないから、選手の
名前とか分かんないけど。

青葉城西……確か、及川徹って人がえげつないん
だっけ。

池尻が言ってたな。
こんなに長身なんだ。松川も、バレー部なん
だろうか。

｢松川は、なんか部活やってんの？｣

｢……あー、いや、3年だから。
つーか、高校入ってから部活やってねえし｣

｢へえ、勿体ない。バレー部とかバスケとか、
欲しがりそうなのにね、そんな長身｣

｢……お前は？｣

さっきから、変にこちらを伺うような話し方を
する。

変な奴だ、なんて思いつつ、8月のコンクール
をもって引退した、自分の部活を口に出す。

｢……吹奏楽だよ。強くもないし、弱小って
やつ？けど、それなりに楽しかった。
部活がなくなって、受験シーズンに入って。

なんか、色々一気に来てる感あるけど｣

弱小。

強豪校には、絶対に分からない。

部員も少なくて、全員をやっとのことで
かき集めて、Ｂ部門に出場。

いつもの事ながら、結果は地区大会銅賞。

毎回シードで勝ち上がって、弱小を見下す
強豪校が、大嫌いで。

｢……お前、部活好きだったんだな｣

｢まあね。でも私、強豪校ってあんま好きじゃ
ないんだよね。

もちろん、強豪校にはなりたいよ？

けど、銅賞の人見下して、毎回全国に堂々と
行って。

絶対的プライドと自信を持って。

……なんか、いけ好かない｣

弱小は弱小なりに生きてんだ。→←シュークリームって食べ方下手だとくわえた反対側からクリームが溢れる。

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