あの、シュークリーム落としましたよ。【HQ】

目玉焼きには醤油派です。 ページ23

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｢……どったの、お前｣

前で話す道宮、澤村ペアの後ろで、うちら
腐れ縁組は互いに下を向きながら話す。

どったの、か。

うん、どうしたんだろうね。

さっきからさ、なんか。


心が、空っぽなんだ。

｢……｣

｢さっきの奴、知り合いか？｣

池尻が私の顔を覗き込む。見られたくない。
そう思っても、どこを動かす気にもなれない。

ただ足だけを、必死に動かしては下を向いて
いる。

｢……笑わない？｣

｢え、あ、おう？笑わねえけど……｣

息を、吸う。
きっとこいつなら、大丈夫。



｢"……好きなんだよ"｣



初めて、本当に心の内で認めた。

本気の好きを、吐いた。

好きなんだよ、どうしようもなく。
好きで、好きで好きで。

大好き、なんだよ。

嗚呼、今まで隠してた辛さが、一気に押し
寄せる。

顔の悪さや過去のトラウマから逃げて、必死に
好きでいることをやめようとした。

認めたくなかった。

でも。

さっきの光景を見た瞬間の、心臓の嘆きが。

もはや、私に嘘をつかせてはくれなかった。

｢……でも、さっきのは｣

｢分かってるよ。
はは、笑えるよね、ほんと。

本気の恋に、失恋。……人生二回目。

ねえ、"隼人"｣

懐かしいね、中3だっけ？

中学の2年間、ずっと好きだった。片想いを
していた。

それなりに仲が良かった。

自分の容姿の悪さを忘れていた。

だから、本気で恋ができた。

｢……俺は｣

｢まあ、結局恋なんかするもんじゃないって
ことだね。向かないみたい、何もかも｣

池尻の顔が、どんどん沈んでいく。
"あのとき"みたいに。

嫌だよ、そんな顔。見たくないよ、そんな顔。

ごめん、余計なこと言ったね。


勘違いだって、言われてもいい。
ブスが調子乗んな、って言われたって
構わない。

でも、あのとき。

中学3年の、2学期前半。

夏の暑さが爪痕を残し、未だにジメジメと
蒸し暑かった頃。

私たち2人は、確実に、互いに互いを好きで
いた。

両片思い、というやつだった。



(……あの噂、もう知ってるでしょ。)

(なんのことだよ。)

(私が、あんたのこと好きだって。)

(……知らねえよ。)


(……私は、本気で！私は、隼人のことが！)

(A。)

(……言わせて、くれないんだね。)



(……暑いから、帰んぞ。)



何もかも忘れられた。
顔の悪さなんて、この頃は気にしてすら
いなかった。


ひと夏過ぎた、夏の影が残る9月のこと。

セーラー服が汗で張り付く教室内で。


私は、失恋を知った。

2個ずつ、分け合おう。→←いや、味噌ラーメンでしょ。

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